HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 63732 Content-Type: text/html ETag: "21a7bd-1ddf-95a31a00" Expires: Sat, 09 Jan 2010 23:21:05 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 09 Jan 2010 23:21:05 GMT Connection: close 多極化する世界 確かな外交戦略をどう描く : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

多極化する世界 確かな外交戦略をどう描く(1月10日付・読売社説)

 21世紀に入って10年目の今年、世界は多極化の傾向を強めているように見える。それを裏書きするように、今年も多彩な首脳会議が開かれる。

 主要先進国に中国、ブラジルなど新興国の首脳らで構成するG20金融サミット。「最上位の国際会議」として世界経済を方向づける指導的役割を担う。

 地球温暖化対策では、今秋メキシコで、国連気候変動枠組み条約の第16回締約国会議(COP16)が、温室効果ガス排出量削減で新たな合意を目指す。昨年のCOP15は、各国首脳が対立を露呈しただけで終わっている。

 先進国の首脳だけが国際秩序を形成したのは過去の話だ。グローバル化が進み、経済危機、気候変動、テロ、核拡散など地球的規模の課題に対処するには、先進国と途上国の協調が欠かせない。

 ◆試される米国の指導力◆

 変動する世界で、平和と繁栄へつながる確かな戦略をどう描き出していくのか。それが、国際社会が直面する重要な課題だ。

 多極化へ向かう世界で、中心的な役割を担える国は、依然として米国以外にはない。

 「チェンジ(改革、変化)」を掲げるオバマ米大統領に、国際社会が期待したのは、強力な指導力の発揮にあった。大統領も、「世界のよりよき未来のために、米国は先頭に立つ用意がある」と繰り返し語っている。

 問題は実行力だ。ブッシュ前政権の負の遺産を批判して新たな政策の方向は示したものの、具体的な成果をあげるには至っていない。オバマ旋風は当初の勢いを失い、米国の最新世論調査でも支持率は5割を切った。

 今年は、オバマ政権の力量が問われる試練の年だ。

 内政の最優先課題とした医療保険制度改革法案は、昨年末、上院で可決された。だが、下院で可決した法案と一本化する困難な作業が待っている。10年間で9000億ドル(約84兆円)にのぼる政府支出の増大を懸念する声は強い。

 下院では身内の民主党からも造反票が出た。上院では、共和党は全員反対票を投じた。そうした対決ムードが、11月の中間選挙にどう影響するのか。

 共和党が下院で多数派に返り咲けば、大統領の政権運営は大きな制約を受けることになる。

 ◆核拡散防止に力を注げ◆

 外交・安全保障も難題だ。

 イラクでは、8月までに米軍戦闘旅団が撤退し、駐留兵力が5万人規模に半減する重要な局面を迎える。3月の国民議会選挙と前後して、各宗派や民族間の抗争が深まることも懸念される。

 アフガニスタンでは、新戦略に基づき米軍を10万人規模に増大させ、安定化に努める。旧政権タリバン勢力の攻勢を阻止し、アフガンを再び拠点にしようとする国際テロ組織アル・カーイダを粉砕するのは容易ではあるまい。

 暴力的な過激派集団が中東から南アジア地域に跋扈(ばっこ)している。イスラム圏で唯一の核兵器保有国パキスタンの政情不安は、核拡散の脅威を高めている。

 「核兵器のない世界」を理念だけに終わらせてはなるまい。米国はロシアとともに、両国が保有する核兵器を大幅に削減する核軍縮を真摯(しんし)に実行していく責任がある。それなくして核拡散を阻止する国際連携の構築は困難だ。

 米露は、昨年末に失効した第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約の発効を急ぐべきだ。

 米国と中国は、イランや北朝鮮に核開発放棄を促すためにも、核実験全面禁止条約(CTBT)を早期に批准する必要がある。

 ◆中国の責任は重大だ◆

 2度の核実験に加え、ミサイル開発や拉致で恫喝(どうかつ)外交を続ける北朝鮮は、世界の成長拠点である東アジアにおける不安定要因だ。

 金正日総書記の健康不安で、日本はじめ関係周辺国は、北朝鮮の急変への備えが緊急の課題となった。最大の北朝鮮支援国、中国の役割と責任は極めて重い。

 中国が、今年、国内総生産(GDP)で日本を追い越して、米国に次ぐ世界第2位の経済大国になるのは確実だ。

 経済力を背景に、軍事力は膨張の一途をたどっている。国防費は1989年から昨年まで21年連続で2けたの伸びを示し、今や米国に次ぐ世界第2位だ。今年も軍拡は()むことはないだろう。

 宇宙軍の創設や、10年後に空母艦隊の完成を目指すなど外洋型海軍への発展にも力を入れる。

 西太平洋やインド洋で安定の要となってきた米海軍に挑戦するかのような動きだ。透明性を欠く中国の軍事力増強で、東アジアの将来には不透明感も漂う。

 日米同盟の維持と強化なしには、東アジアの平和と繁栄が保障されないのは自明の理である。

2010年1月10日01時13分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
現在位置は
です