中国の若者は世界に数多(あまた)国ある中で、日本を一番好いていてくれるらしい。そんな新聞記事の見出しを見て、へぇ、と思ったが、もちろん悪い気はしない▼中国紙が北京など五都市で千三百人以上を対象に「最も好きな国は」と聞いたアンケートの結果である。十五〜二十歳の年代では「日本」の回答が12・3%で、米国やフランスを抑えて一位。日本製アニメなど若者文化浸透の影響が大きいらしい▼ところが、だ。三十一〜四十歳になると、話は別で「日本」の回答はたった2・5%。記事によれば、抗日戦争を教材に愛国教育が強化された一九九〇年代に十〜二十歳代だった年齢層だという▼二十年前の子どもは今は大人、二十年前から見れば、今は未来。「子どもは未来」「教育が未来をつくる」というが、まったくだ。その点、気にかかるのがこの調査結果である▼日本政策金融公庫による教育ローン利用者を対象にした調査。小学生以上の子がいる年収二百万円以上四百万円未満の家庭では教育費が年収の実に48%を占めていた。低収入ほどその割合は高いという。回答からは、食費を削り小遣いを我慢し、ギリギリ教育費をひねり出している親の姿が浮かぶ▼親なら当然、かもしれない。けれどこれは、個々の親が「子の未来」を思う情愛の強さで、危うく支えられている「この国の未来」だともいえないか。