米国とロシアが新核軍縮条約の締結交渉を近く再開する。新条約は1991年に調印した第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わるものとなる。START1は昨年12月5日に失効し、米ロ間にはいま、検証措置を伴う条約がなくなっている。早期の締結を求めたい。
米ロ両国は当初、昨年末までの条約締結を目指していた。交渉の新たな目標期限は設けていない。
これまでの交渉では、戦略核弾頭数の保有上限を各1500〜1675個と、START1に比べておよそ4分の1に減らすことで合意している。ミサイルなど運搬手段の制限も含めた大枠は固まっている。
最大の争点は、厳しい検証措置を求める米側と、米国のミサイル防衛(MD)計画の情報提供や一定の制限条項を条約に盛り込もうとするロシア側の対立にある。
厳格な検証措置を伴う条約に仕立てるのは当然である。同時に、新たな目標期限がないからといって、相互の利害対立を理由に交渉をいつまでも引き延ばすべきではない。
START1の失効で、移動式ミサイルを生産するロシア中部の工場に常駐していた米監視団は撤収を余儀なくされた。米ロは速やかに妥協点を見いだすべきだろう。
今春には核安全保障サミット、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が控えている。オバマ米大統領が唱える「核兵器なき世界」の実現を目指すうえでも、世界の95%の核兵器を保有する米ロがまず、核軍縮への模範を示す必要がある。
NPT再検討会議に向けては、日本とオーストラリアが主導する賢人会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」が、核廃絶への道筋を示した報告書をまとめた。2025年までに、世界の核弾頭総数を2000個以下に抑制するよう提言した。米ロは各500個を上限としている。
世界に現存する核弾頭は2万数千個にのぼる。これを9割以上削減するという野心的な提言だ。実現できるかには留意すべき面もあろうが、米ロが戦術核も含めた一層の核軍縮の義務を負うのは自明の理だ。核戦力を増強する中国、北朝鮮やイランの核兵器開発の野望を阻止するうえでも、米ロは範を垂れるべきだ。