HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 21690 Content-Type: text/html ETag: "39c0eb-54ba-3b899700" Cache-Control: max-age=3 Expires: Sat, 09 Jan 2010 01:21:04 GMT Date: Sat, 09 Jan 2010 01:21:01 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

日米外相会談―同盟関係の本論に入ろう

 岡田克也外相とクリントン米国務長官が週明けにハワイで会談することが決まった。鳩山政権が昨年12月、米軍普天間飛行場の移設先の決定を先送りする方針を決めて以来、初めての会談だ。傷ついた信頼関係を再構築する出発点としたい。

 鳩山由紀夫首相は昨年末、コペンハーゲンで開かれた温暖化対策の国際会議の際にオバマ大統領との会談を模索したが実現しなかった。岡田氏の昨年中の訪米も見送られた。

 クリントン氏が今回、会談に応じたのは、普天間問題のこじれで指導者同士が会うことすらできないというような印象を内外に与えることは、日米関係の重要性から見て好ましくないと判断してのことだろう。

 普天間の移設先について、政府は5月までに結論を出すべく、政府・与党の作業チームで辺野古以外の案の検討を始めた。外相会談では、日本側の考え方と取り組みを説明し、立場の違いはそれとして、意思の疎通を図ってほしい。

 会談にはもうひとつ、重要な課題がある。普天間問題のもつれで棚上げ状態になっている「同盟深化」の協議に入るよう合意することだ。

 今年は現在の日米安保体制ができてから50年の節目にあたる。昨年11月の首脳会談では、未来に向かって両国関係を重層的に強化する「同盟深化」の議論を始めることで一致した。

 日米安保は冷戦を背景にできたが、冷戦後も引き続きアジア太平洋地域の安定のために欠かせない。橋本龍太郎首相とクリントン大統領は1996年、安保体制をそうした同盟として再定義する共同宣言を発表した。

 それから10年以上がたち、中国の台頭をはじめとする安全保障環境の変化に加え、国際テロや核拡散、地球温暖化などの新たな地球規模の脅威も顕在化してきた。そうしたなかで、日米の同盟関係をどう役立てるのか。日米協力の意義や日米それぞれの役割を再々定義する格好のタイミングである。

 米国側には、自衛隊の海外活動や防衛力整備などで日本がより積極的な役割を果たすことへの期待もあるに違いない。鳩山政権側には、軍事中心になりがちだったこれまでの同盟の幅を広げたいとの意向がある。

 日本は何をすべきなのか、あるいはすべきでないのか、国民の間でも幅広い議論をする好機になる。

 この日米外相会談を、普天間問題はひとまず切り離して、そうした大きな日米関係の重要性を確かめ合う場としたい。

 だからといって、普天間問題を早く決着に向かわせることの大切さは変わらない。鳩山首相が内外に公約した5月までに責任ある結論をまとめなければ、同盟の本論も漂流しかねない。

市民税減税―名古屋のどえりゃー挑戦

 首長が動けば、こんなこともできるのかと驚いた人も多いだろう。名古屋市の河村たかし市長が議会を押し切り、新年度からの市民税減税が決まった。思い切った挑戦に注目したい。

 個人市民税、法人市民税をともに10%減税する。個人の場合、年収500万円で年にざっと9500円、1千万円で3万2900円の減税となる。

 市区町村民税は通常、個人なら3千円と各種の控除をした後の所得の6%を納める。2004年度の地方税法改正により自治体の政策判断で変更可能になり、財政難の北海道夕張市が高くしたが、減税した例はなかった。

 東京都杉並区も将来の減税のために基金を積み立てる方針のほか、名古屋市に刺激され、同じ愛知県の半田市が新年度に個人市民税の減税に踏み切ることが決まっているが、200万都市が恒久減税に踏み切る影響は大きい。

 河村氏は、減税を売りに企業や住民の誘致をはかるという。中日ドラゴンズの落合博満監督も「東京から住所を移そうかな」と語った。

 しかし話はそう簡単ではない。減税の初年度には161億円が不足する。名古屋市は地方交付税の不交付団体で、一般会計も1兆円規模だが、公債発行残高はその2倍近くある。市民サービスが削られてしまうのではないか、借金が膨らむのではないか、との不安はぬぐえない。

 河村氏は、財源を行革で生み出す方針だ。逆に行革を強力に進めるてこに減税を使いたいとも言う。

 名古屋市でも裏金が発覚し、水が余っているのに徳山ダム導水路事業に参加するなど、市民が首をかしげることが多かった。とはいえ無駄を洗い出し、事業をふるいにかけるのは簡単ではない。事業仕分けなどで十分な財源を生み出せず、国債発行が過去最大の規模に膨れあがった民主党政権の予算編成の苦吟をみればわかる。

 一律減税は高額納税者ほど恩恵が大きい。そのために低所得者にとりわけ必要な福祉サービスが切られるようなら、本末転倒だ。河村氏は「必要なサービスは守る」と約束した。予算編成でそれを果たしてもらいたい。

 市議会の大勢は、財源論などから慎重だった。ところが市長支持者らがリコールの準備を始めたことなどを契機に賛成に踏み切った。

 議員ボランティア化が持論の河村氏は、議員定数や報酬を半減させる条例案まで提案している。中学校区程度のエリアで無給の公選委員らによる地域委員会をつくり、約1千万円ずつ予算の使い道を決める事業も、モデル的に始めることが決まった。

 議員も安穏としてはいられない。市長と議会の緊張関係は歓迎だ。議会もしっかり監視し、提案し、存在価値をアピールしてもらいたい。

PR情報