少子化対策に、子ども手当が創設されます。だがそれだけでは不十分。「社会全体で子育て」することが必要です。今年をその元年にすべきです。
労働力人口は、少子化が進めば二〇三〇年には〇五年より約一千万人減り、約五千六百万人になります。高齢化も進むのに年金制度の支え手が減り、市場も縮小し、社会の活力は失われてしまいます。
少子化対策の先に目指す社会とは、性別や仕事の有無に関係なく、子供を産み育てたい人がそうできる社会です。それには子育て家庭への経済支援、保育所整備など保育サービス支援、働きながら子育てができる働き方の見直しの三つが対策となります。
子ども手当はまず一歩
経済支援に、民主党政権は子ども手当を創設しました。「子供一人一人の育ちを社会全体で応援する」ため、所得制限しなかったことは評価できます。
これまで「子育ては家庭の問題。政府はお手伝い」との考え方で、子育てに十分な所得がある家庭への経済支援には、所得制限を設けてきました。一方、子ども手当は、親の所得や結婚の有無などに関係なく、子供は等しく社会で支援します。鳩山由紀夫首相は「新しい公共」と表現しましたが、少子化対策に向けた考え方といえるでしょう。
現在の児童手当は、選挙対策に増額されバラマキとの批判を浴びたこともあります。子ども手当は、党利党略であってはなりません。
二つ目の保育サービス支援は今、厚生労働省でその制度改革が検討されています。改革の目的はここでも「すべての子供」を対象にした制度への転換です。
これまで、保育所は共働きやひとり親家庭の子供が対象でした。今後は、地域で子育てが孤立しがちな専業主婦家庭も含め、「保育が必要な子供」の支援です。
待てない保育制度改革
働き方が多様化し深夜や休日、短時間勤務の親もいます。子供が病気になることもあります。今の保育所はこうした人たちには使いやすいとは言いにくい。放課後に保育の必要な小学生が過ごす学童保育も、整備が進んでいません。
制度改革では、保育の質を落とさず、多様なニーズに応えるサービスを目指します。同省は一三年度から新制度をスタートさせる予定ですが、それでは遅すぎます。保育所に入れない待機児童は約二万五千人、「できたら預けたい」と考えている潜在的需要は百万人と推計されています。働くために子供を預けたい家庭は、今、預け先が必要です。改革はスピードも求められています。
保育所整備などは財源が必要です。子ども手当以外にも最大二・四兆円の追加費用が要ります。財源をどう確保するのか。消費税だけでなく、税制全体の見直しから捻出(ねんしゅつ)する視点が必要です。増税になるのなら、国民に「社会で子育て」の必要性を粘り強く訴え、受け入れてもらうべきです。
手当ももらえ、預けられる保育所ができても、対策は十分とはいえません。保育所が夜遅くまで子供を預かってくれても、そもそも子供を夜遅くまで預けなければならない働き方が問題だからです。出産を機に働く女性の約七割が仕事をやめます。仕事と子育ての両立はしにくいのが現状です。
問題は男性の働き方にあります。六歳未満児を持つ男性の一日の育児・家事時間は四十八分、女性は七時間四十一分もあります。女性は仕事に加え、家庭でも大きな負担を強いられています。
長時間労働の抑制に、労働基準法が改正され今年四月から、残業手当が割り増しされます。父親の子育て参加を促すため、育児休業制度を充実させたり、三歳未満児の親に短時間勤務と残業免除を認めるなどの改正育児・介護休業法も六月に施行されます。
高度成長期以降、正社員男性が長時間働き、専業主婦が家事・育児を担ってきました。今は、子育て中の父親の約七割が仕事と子育ての両立を望んでいます。時代に合った働き方に変わるべきです。
新たに、雇用が不安定な非正規が若者に増加しています。これが最大の課題です。働く三人に一人は非正規、しかも雇用情勢の悪化で失業者も増えています。ひとり親家庭の親の多くも非正規で働いています。正規社員の働き方の見直しと同時に、非正規への就労支援が必要です。希望ある安定した生活あっての結婚、出産、子育てです。
介護同様に社会化を
少子化対策の政策提言を続ける「にっぽん子育て応援団」の共同代表、堀田力さんは「子育てを社会化しよう」と呼び掛けています。高齢者介護は既に、介護保険制度で実現しました。子育ても社会で支える時期にきています。
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