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財務相交代―鳩菅内閣の真価示せるか

 藤井裕久財務相が、健康上の理由で辞任する。鳩山由紀夫首相が後任として白羽の矢を立てたのは、菅直人副総理だ。

 菅氏は昨年暮れの予算編成で、子ども手当やガソリン税の暫定税率などをめぐって閣僚間の調整に動き、予算案の事情に通じている。もともと政策通としても知られる。あと2週間足らずに迫った通常国会に向けて、「即戦力」としての起用である。

 この内閣の財務相が背負う責任は極めて大きい。政権公約には巨額の財源を要する数々の野心的な政策が盛り込まれている。そのどれを、どの程度、予算案に盛り込むか、財源をどう手当てするか、不急の政策にどう待ったをかけ、あるいは削り込むか。景気をにらみつつ、難しい政府内の調整を引き受けなければならないからだ。

 旧大蔵省出身で、細川内閣と羽田内閣で蔵相を務めた経験もあるベテラン、藤井氏にして容易にはこなせなかった。これまでの官僚主導に代わって、何から何まで政治家が取り仕切るのだから、「相当疲れた」と語ったのも分かる。

 藤井氏の辞任は、政治主導の重圧、難しさを示す出来事とも言えよう。

 それが、これからは菅氏の肩にのしかかる。副総理兼国家戦略相として内閣の要所にいたとはいえ、政策の方向付けや政府内調整にはなかなか乗り出さなかった。鳩山首相や小沢一郎民主党幹事長との微妙な人間関係や、「鳩山後」への思惑が絡み合ったためだったのかもしれない。

 だが、これからはそうはいかない。

 財務相として来年度予算案の国会での成立、また不況からの脱却やもしもの場合の補正予算編成など経済・財政政策を切り回す以上、名実ともに政権ナンバー2の責任を負うことになる。

 鳩山政権は、普天間問題の迷走をはじめ、外交でも内政でもなかなか決断できない場面が続いてきた。連立相手の国民新党や社民党に振り回されているという批判にもさらされている。

 理由は首相の指導力不足と、首相を支える「チーム鳩山」の機能不全だ。菅氏は鳩山氏と2人で旧民主党を立ち上げた。その出発点を思い起こし、「鳩菅」の連携で政権立て直しに力を合わせていくしかあるまい。

 菅氏に代わって国家戦略相を兼務する仙谷由人行政刷新相も、無駄の削減に加えて経済・財政運営の骨格を決める攻守両方を担い、役割は今まで以上に重くなる。

 このチームが機能できなければ、小沢氏頼みの政策決定の二元化が深まることになる。さらに政権の求心力を弱めることにならざるを得ない。

 財務相の交代を、政権立て直しのきっかけとできるかどうか。「鳩菅内閣」の真価が試される。

日航問題―成長戦略として取り組め

 日本航空の再建問題について、政府内の調整が大詰めを迎えている。株価下落も招いており、支援決定が遅れれば状況をいっそう悪くする。政府には国民の納得がいく方法で、早く方針を決める責任がある。

 支援手法をめぐっては、政府内に意見の食い違いがある。

 支援の実動部隊である官民ファンドの企業再生支援機構は「事前調整型の法的整理」を検討している。昨年、米ゼネラル・モーターズ(GM)の支援で米国政府が使った手法である。

 機構があらかじめ日航に融資している金融機関と債権カットの方法などを決めたうえで日航が会社更生法の適用申請をする。同時に機構が支援を表明し、公的資金なども活用して短期間で再生を果たすシナリオだ。

 だが日航や国土交通省はそれに反対し、私的整理を主張している。会社更生法の適用は「倒産」イメージが強く、安全を担う航空会社のブランド価値を著しく損えば、再建が難しくなるというのだ。民間金融機関にも、債権カット額が大きくなる法的整理に抵抗感が根強い。

 いずれの道を選ぶにせよ、運航・サービスは途絶えさせない。そのために必要なら公的資金や政府保証の枠組みを活用する。そういう基本方針は固まっているようだ。

 であるならば、なぜ特定の民間企業を政府が支援するのか、公的資金投入は本来タブーのはずではないか、などという納税者の当然の疑問に答えることが政府に求められる。

 大事な原則は、政府が守るべきは日航という会社組織ではなく、日航が担っている国民の「空の足」の機能であり、貿易立国を支える航空輸送のパイプの役割だということだ。それが著しく低下したり、損なわれたりする事態は避けなければならない。

 その原則に立つと、日航支援を危機対応策に終わらせず、日本の成長戦略に欠かせない総合的な航空政策の一環として取り組む必要が浮かび上がる。

 鳩山政権の新成長戦略では、訪日観光客数を10年後に現在の3倍の年間2500万人に増やす目標が掲げられている。観光資源の潜在力からすれば決して不可能な数字ではない。

 しかし、それを達成するには、空港着陸料や国際航空運賃の大胆な引き下げが必要になる。日航と全日本空輸の国内大手2社の競争はいうまでもなく、オープンスカイ(航空自由化)政策を進め、内外の航空会社による価格・サービス競争を促さなければならない。政府はそういう前提で日航支援策を決めるべきである。

 日航支援につぎ込む公的資金は、将来の日本を豊かにする「投資」だ。それが国民にはっきり分かるような再生計画を示すことだ。

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