HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 06 Jan 2010 01:15:42 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:年のはじめに考える デフレ脱却が最優先だ:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

年のはじめに考える デフレ脱却が最優先だ

2010年1月6日

 景気の二番底懸念が消えないまま、新年を迎えました。心配なのはデフレの加速です。鳩山由紀夫政権はどうデフレを止めて、成長を取り戻すのか。

 美容院経営者が嘆いています。

 「これほどの不況は経験したことがないですね。新規顧客が減っただけでなく、お得意さんも確実に来店の回数が減りました。月に一度は来ていた客が二カ月に一度とか。平日はガラガラですよ」

 飲食店チェーンの経営者も「昨年十月から確実にデフレスパイラルに入った」と断言します。昼の定食でも五百円前後のメニューが珍しくなくなりました。

◆先が見えない世界経済

 暮らしの足元をみれば、物価下落と景気の冷え込みはあきらかです。視野を世界に広げても、先行きは極めて不透明です。

 国際通貨基金(IMF)の見通しによれば、世界全体で昨年のマイナス成長からことしはプラス成長に戻りますが、けん引するのは中国やインド、ブラジル、ロシアといった新興国です。

 新興国の高成長は心強いのですが、それでも米欧が伸びないと輸出が低迷し、息切れする心配があります。米国では住宅に続いてショッピングモールなど商業用不動産の価格が下落し、不良債権を抱えた地方金融機関の破綻(はたん)が相次いでいます。失業率も高止まりし、とても楽観できません。

 世界は金融危機の後遺症から脱したとはいえず、当面は各国が財政金融政策をフル出動しながら、小康状態から安定に戻るのを待つ状況が続きます。

 そこで、日本。

 鳩山政権は昨年末、成長戦略の基本方針を発表しました。医療・介護や環境・エネルギー、観光・地域活性化、アジアを柱に、二〇二〇年度までの平均で名目3%、実質2%成長を掲げています。

◆政府・日銀が共同目標を

 うまくいけば、〇九年度に四百七十三兆円の国内総生産(GDP)見込みが二〇年度に約一・四倍の六百五十兆円に拡大する見通しといいます。政権交代して初めての成長戦略ですから、数字が多少大風呂敷だとしても、そこは割り引くことにしましょう。

 でも、やや心もとないのは当面の最重要課題であるデフレ克服について「日銀と一体となって、早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む」と記述するにとどまっている点です。

 デフレを止めるには、潜在的供給能力と需要のギャップである需給ギャップを埋めるとともに、通貨の供給量を増やす日銀の金融政策が鍵を握っています。政府が本気でデフレ退治に乗り出す意思があるなら、日銀との共同作戦が重要になってきます。

 政府と日銀は具体的にどのくらいの物価上昇率を目指すのか、緊密な議論を始めるべきではないでしょうか。日銀は政府との協議を「圧力」と受け止めるきらいがありますが、物価安定が健全な国民経済の大前提であることを踏まえれば、共同目標を考えるのは政府の責任でもあります。

 もう一つの需給ギャップを埋めるのは容易ではない。財政赤字の大きさを考えれば、単純に公共事業を増やす手法には限界があります。一つのキーワードは成長戦略にもある「アジア」でしょう。

 すでに多くの企業が消費市場が広がるアジアに販路を伸ばし収益を上げています。自動車や電機、化粧品に限らず、コメやリンゴのような農業作物も有望な輸出品になる可能性があります。

 双方の利益になる自由貿易協定(FTA)の網を拡大する方策も重要です。経済グローバル化の果実部分を享受していこうとする戦略の方向性は間違ってはいません。

 環境・エネルギー重視も日本が強い分野ですから、単に国内での需要創出だけでなく、世界市場での競争に勝ち抜いていく可能性を秘めています。こうした産業の育成は税金の無駄遣いに目を光らせつつ、おおいに進めればいい。

 ただ、政府は目先の産業政策だけでなく、もっと根本的な改革への努力が不可欠です。

 たとえば年金を含めた社会保障に対する信頼感がなければ、家計は消費を拡大しないでしょう。保育所に入れない待機児童がたくさん残っている限り、働く女性は増えません。FTAだって日本が高水準の農業保護を続ける限り、農業に強みがある新興・途上国は日本を相手にしません。

◆山積み課題を片付けよ

 こうした課題は長年、指摘されながら解決が先送りされてきました。ある経済人がかつて指摘したように「日本の課題は書店にいけば、すぐ分かる」。これまでの政権が山積み状態を放置して真剣に取り組んでこなかったのです。

 ぜひ鳩山政権が前向きに取り組むよう望みます。

 

この記事を印刷する