HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 05 Jan 2010 22:16:47 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:年のはじめに考える 日本の夜明けは近いか:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

年のはじめに考える 日本の夜明けは近いか

2010年1月5日

 鳩山由紀夫首相が年頭会見を行い、二〇一〇年の政治が本格始動しました。日本が低迷から抜け出して再び「夜明け」を迎える日は近いのでしょうか。

 首相は冒頭「原点、初心に帰って国民と一緒に新しい政治をつくり上げたい。正念場の一年だと覚悟を決めている」と強調しました。

 首相の年頭会見は恒例行事ですが、政権交代後初の今回は、悲壮な決意が伝わってくるようでした。

 ただ、大事なことは、国民が実感できる政権交代の「果実」を、早急に示すことです。掛け声倒れでは期待は失望に変わります。

 通常国会が天王山

 今年は三年に一度の参院選の年です。選挙結果は、政権の枠組みを大きく左右します。

 改選を迎える百二十一議席のうち民主が六十議席を獲得すれば、非改選と合わせて参院で単独過半数に達し、有権者が民主単独政権を望んだことになります。

 社民、国民新との与党三党で辛うじて過半数なら今の連立政権維持を、三党で過半数に達しなければ、民主中心の連立政権に「ノー」を突き付ける意思表示です。

 その参院選の行方を占うのが、十八日召集予定の通常国会です。

 首相は年頭会見で「景気が二番底になってはいけない」と、二〇〇九年度第二次補正予算案や一〇年度予算案の早期成立に全力を挙げる考えを表明しました。

 また一〇年度予算成立後に、国家戦略室を「局」に格上げする政治主導確保法案や、官僚答弁を禁じる国会法改正案などの成立を図る意向も示しました。

 予算成立が遅れれば、経済への悪影響も予想されますし、他の重要法案への影響も必至です。審議を尽くした上で、できるだけ速やかに成立させることが肝要です。

 ただ、その前に、首相の資金管理団体をめぐる偽装献金事件が立ちはだかっています。

 「国のかたち」示せ

 元公設第一秘書が在宅で、元政策秘書が略式でそれぞれ起訴され、首相が六億円近くの贈与税を納税したとはいえ、昨年末の世論調査によると八割近くの有権者が首相の説明に納得していません。

 首相は会見で「国会で議論があれば、丁寧に答えたい。使い道なども説明したい」と述べました。

 野党側が厳しく追及するのは当然です。予算を「人質」に首相を追及し続ける国会戦術は褒められたことではありませんが、予算審議への影響を避けるためにも、「政治とカネ」に対する不信を払拭(ふっしょく)するためにも、首相は丁寧な説明に努めるべきでしょう。

 国民の理解が得られず、50%を割った内閣支持率がさらに下がるようなら、首相交代の芽すら出かねない重大事と心得るべきです。

 もう一つ、首相に説明をしてもらいたいことがあります。それは日本が本格的な少子高齢化社会を迎える中、どのような国づくりを目指すのか、ということです。

 社会保障制度をどう構築し、その負担をどのような形で国民に求めるのか。「国のかたち」ともいえる政府のあり方を示すことは指導者に課せられた役割です。

 首相は昨年、就任後初の国会論戦で「それほど大きな負担にならなくても、大きな幸せを享受できる社会をつくることができる」と表明し、所信表明では「官」だけが人を支えるのでなく、市民やNPOもその役割を担う「新しい公共」という概念を提示しました。

 それは理想像の一つかもしれませんが、地域や家族の絆(きずな)が薄れる中、どう具体化するのか。示すべきは設計図の方です。

 首相が会見で「国政の半分」を占めると言い切った外交・安全保障でも説明が求められています。

 首相は「緊密で対等な日米同盟」を掲げていますが、その具体像は残念ながら明らかではありませんし、日米安全保障条約改定五十年を契機とした同盟深化のための協議も緒に就いていません。

 日米間で懸案となっている米軍普天間飛行場の移設問題でも、首相が衆院選の公約通り、沖縄県外・国外移設の検討を貫く決意があるのか、国民や米国側に、はっきり示す時期にきています。

 維新政府を成功に

 首相は昨年の所信表明で、鳩山内閣の取り組みを「無血の平成維新」と表現しました。

 官僚から「国民への大政奉還」を遂げた首相は、幕末の志士気取りなのでしょうが、だとしたら首相には「維新政府」を成功に導く極めて重い責任があります。

 日本経済は長期低迷に苦しみ、地域からは活気が失われつつあります。それらに終止符を打ち、再び社会が活気づく「夜明け」を迎えることができるのでしょうか。

 鳩山首相が舵(かじ)取りを誤れば、日本は再び夜明けを迎えることはできないのかもしれません。首相にとっても、首相を選んだ国民にとっても正念場の一年なのです。

 

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