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社説1 「機構」の発足を制度改革の弾みに(1/5)

 「不祥事のデパート」とまでやゆされ、国が運営する年金への不信感を増幅させた社会保険庁が廃止され日本年金機構が発足した。厚生労働省の外局という官僚組織から非公務員型の組織に生まれ変わったことになる。鳩山政権はこれを弾みとして年金制度改革にも着手すべきだ。

 民主党は政権公約で一貫して年金制度を根本からつくり直すと表明してきた。社保庁と財務省・国税庁を統合し、歳入庁を新設するのも公約の目玉だ。その実現に向け、新たな年金制度とそれを担う組織創設の道筋を示す責任が政府にある。

 年金機構の理事長は日本経団連の元専務理事、紀陸(きりく)孝氏が就いた。最初の課題は緊張感が乏しいお役所仕事を改め、国民第一の視点を持つ組織に脱皮させることだ。

 社保庁は長年、県単位の社会保険事務局やその傘下の社保事務所が年金保険料の支払い記録をぞんざいに扱ってきた。2007年の参院選で自民党が負け、安倍晋三首相が退陣した主因の一つが記録問題だった。

 それだけではない。記録問題が表面化する前から、職員による政治家や芸能人の年金情報の盗み見、スポーツ施設やマッサージ機の維持購入費への保険料の流用、傘下のファミリー企業とのあやしげな随意契約など、不祥事は枚挙にいとまがない。

 年金運営を国の機関から切り離す意義は、不祥事の温床ともいえる硬直した人事慣行や本庁の地方組織への統治不在を打ち破ることにある。紀陸氏は組織の隅々にまで顧客第一主義の精神を徹底させてほしい。

 社保庁時代に懲戒処分などを受けた職員のうち、500人強は機構に移るのを認められず事実上、解雇された。これら職員の行為が年金不信の温床になった事実を考えると、解雇はやむを得まい。

 国民年金の保険料徴収の効率化も課題だ。08年度の未納率は37.9%と過去最高を記録した。国民皆年金制は崩壊の瀬戸際にある。市場化テストをうまく使い企業への業務委託を増やすなどして、保険料を効果的に集める体制を築いてほしい。

 仕事始めの4日、長妻昭厚労相は機構幹部に「日本が誇る行政サービスを実現する組織に生まれ変われ」と発破をかけたが、若い世代にも納得ずくで年金財源を負担してもらうには組織改革だけでは不十分だ。

 新しい制度への移行の道筋と歳入庁の新設に向けた行政改革の段取りの明示こそが、年金不信を和らげる切り札になる。改革を遅らせれば若者や子供へのつけ回しが大きくなる事実を厚労相は思い起こすべきだ。

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