もう鳴いたのかな。いや、まだみたいだよ。早く鳴かないかな。あ、いま鳴いた。ほんとうに鳴いたね。次はいつ鳴くかな――。正月早々からネットがにぎやかなので何かと思えば、鳩山首相が始めたブログとツイッターの話題だった。
▼ブログは気ままな日記のように、ツイッターは独り言のように。画面に表れては消える言葉の数々が、人々の「今」の思いを伝える。いつ発言するかは発信者の都合次第である。「今朝早くいい陽射(ひざ)しにつられて公邸の庭に出ましたが、とても寒いですね」。仕事始めの日の首相のつぶやきは、こんなふうだった。
▼首相のネット登場をハト時計にたとえて面白がるのは、無邪気な好奇心からだろう。壁を見上げて、じっとハトが鳴くのを待つ子供の姿が思い浮かぶ。木造のかわいい家を花や動物が楽しげに囲んでいる。唐突に機械音がすると、窓から勢いよく白い鳥が飛び出して時を告げる。鳴き声を数える子供の顔は真剣だ。
▼とはいえ、慣れてしまえば、ハト時計もただの掛け時計。鳴きたいときだけ鳴いて、そっけなく引っ込む鳥に白けた気分になることもある。首相のつぶやきは、人々の関心をつなぎ留めることができるだろうか。ちなみに日本ではハト時計と呼ぶが、あの鳥は本当はハトではなくカッコウ。すなわち閑古鳥である。