「一人勝ち」という言葉は、この企業のためにあるように思える。不況の中で、好調を維持するカジュアル衣料品の「ユニクロ」だ。価格だけではなく、品質の良さとファッション性とのバランスが取れているのが、消費者には魅力なのだろう▼ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正社長は著書で「本当は大した成功でもないのに、自分が相当大きなことをやり遂げたような錯覚をしている」と「成功」を取り違えている経営者が多いと指摘した(『成功は一日で捨て去れ』)▼そんな錯覚を生むなら、成功という名の失敗であると柳井社長はいう。「ちょっとした成功なら、すぐに捨て去るぐらいの強い意志が必要だ」と安定志向を戒める厳しさが強さの秘密なのだろう▼鳩山由紀夫首相はきのう、年頭の記者会見で「景気が二番底になってはいけない」と強調した。経済の先行きが見通せない不安な仕事始めになった▼価格競争の激化→従業員の賃金の下落→一層の価格破壊…。デフレの悪循環は、日本経済を二番底に突き落とす。人件費の安いアジアの工場に委託しているユニクロには、「デフレの象徴」と批判の矢も飛ぶ▼日本だけがグローバル化を避けられるのか。柳井社長の「悪玉論」への反論だ。私たちが立ち向かうのは、弱肉強食の社会をつくるグローバル経済という目に見えない怪物なのだ。