「七十五年間草も木も生えない」といわれた広島の焦土に、いち早く花を咲かせた植物がある。葉などに毒があり、「縁起が悪い」と嫌われていた夾竹桃(きょうちくとう)だ。その生命力は再生のシンボルにふさわしく、広島市の「市花」に定められている▼排ガスに直撃される道路沿いの場所でも根を広げ、夏から秋にかけて南国風の花をつけるその夾竹桃が先月、福岡市の小中学校九十校から姿を消しかけた▼きっかけは、「子を持つ親として心配なので撤去してほしい」と毒性を指摘する匿名のメール。子どもが口に入れるなど、万が一の事態を考え、市教委は六百本すべてを伐採するように、各学校に通知した▼すると今度は「危険性を知らせればよく、安易に切るべきでない」との批判が殺到、十日後に通知を撤回した。「朝令暮改で申し訳ない」と市教委は反省しきりだった▼このニュースを見て、ダイオキシン問題がクローズアップされた十年ほど前を思い出した。正月のしめ飾りなどを焼くどんど焼きの中止が相次ぎ、幼稚園の焼き芋行事が取りやめになるなど、明らかな過剰反応もあった▼きのう、どんど焼きを知らせる紙が近所の掲示板に張ってあるのに気付き、少しほっとした。プラスチック類を取り除き、行事を続けている神社も多いという。伝統行事と環境への配慮を両立させたのは「分別焼き」という知恵だった。