きょう、仕事始めのあいさつや訓示が待っている職場も多かろう。いままさに出勤の途上にあり、何を語るべきか頭を悩ませている方もおられるのではないか。日本の行く末は暗い。わが社の経営も厳しい。各員一層、奮励努力せよ…。
▼専門家によれば、こんな悲観論と命令口調は一番嫌われるらしい。状況が厳しいのは皆分かっている。経営の厳しさも現場の方が日々痛感している。社員や部下を脅すのは易しい。まずは昨年の働きをねぎらい、さらに逆風の中でも説得力のある希望を語れるかが、リーダーとしての見識と器の見せどころとなる。
▼サッカー監督の羽中田(はちゅうだ)昌(まさし)さんは、選手に「ミスした時こそ笑え」「苦しい時こそ皆で上を向け」と指導したという。名門高で選手として活躍したが事故で下半身不随に。スペインでコーチとしての修行を積み、帰国後に指導者の資格を取得。車いす監督として香川県の社会人チームを率い四国リーグ優勝に導いた。
▼なぜ笑うのか。まじめな選手であるほどミスをすれば自分を責める。チーム全体が不調に陥れば皆が縮こまる。そうなっては出せるはずの力も出せなくなる。失敗を恐れず、前に進む。そのための笑いだ。聞く人の笑顔を引き出す。心持ちを前向きにしてくれる。きょう、あえてそんな言葉を交わし合うのもいい。