
HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 66183 Content-Type: text/html ETag: "15c643-2638-22e1640" Expires: Sun, 03 Jan 2010 03:21:10 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 03 Jan 2010 03:21:10 GMT Connection: close
![]() 「ニッポン漂流」を回避しよう 今ある危機を乗り越えて(1月1日付・読売社説)◆国家戦略を示すときだ◆ 景気はよくなるか。医療、介護が安心して受けられるか。日米関係に亀裂は入らないか。 多くの国民が、こんな不安を胸に新年を迎えたに違いない。日本の将来に、期待よりも懸念、希望よりもあきらめを強く抱かせるような、政治の迷走、経済の停滞が続いているからだ。 主な原因は、鳩山連立政権が日本の平和と繁栄、安心社会を維持するための、中長期の国家戦略を欠くうえに、当面の針路すら国民に明示できないことにある。 国家戦略なき日本は、国際社会の荒波の中で孤立化し、やがては漂流することになろう。これでは困るのだ。 日本が進むべき道は何か。どんな国造りを目指すのか。新しい国家像をどう描くのか。危機を乗り越える具体的な処方 ◆連立の弊害をただせ◆ 鳩山政権の機能不全は、大きく言えばキャスチングボート政治、マニフェスト至上主義、官僚排除に由来する。 加えて、鳩山首相自身の献金問題だ。首相は進退を世論に委ねる意向を明らかにしたが、展開次第では政変に結びつく。日本政治が激動する可能性もあろう。 小所帯ながら参院で法案成否の鍵を握る社民、国民新両党が大勢力の民主党を振り回し、外交・安全保障や財政・経済運営の基本をゆがめる現状は看過できない。 象徴的事例が、米軍普天間飛行場移設問題の決着先送りだ。鳩山首相の優柔不断もさることながら、連立政権維持を優先する民主党の小沢幹事長らの思惑により、日米同盟の危機が指摘される事態になっている。 1955年の保守合同は、左右両派社会党の統一を目にした保守陣営の危機感から誕生したが、小党乱立の弊害を除くねらいもあった。 55年体制には功罪あるが、日米同盟に基づいて日本の平和を確保し、自民党一党支配による政局の安定と、それに伴う経済成長の礎を築いたことは間違いない。 鳩山内閣はキャスチングボート政治からの脱却が迫られている。国の命運がかかり、国民生活の基盤が左右されるような重要政策・法案の成否に当たっては、野党とも提携する「部分連合」や、大胆な政界再編による「挙国政権」づくりをためらうべきではない。 ◆日米基軸が国益に沿う◆ 言うまでもなく、日米同盟は日本の安全保障の生命線だ。 核開発を続ける一方で体制保証と経済支援を強要する北朝鮮、軍事力増強を背景に経済権益の拡大を図る中国。 政治体制が異なる両国と一衣帯水の日本にとって、安全保障同盟を基軸とする良好な日米関係の維持は、国家戦略の基本に位置づけられなければならない。 それなのに、東アジア共同体構想を掲げ、米国離れを志向する鳩山首相の言動は極めて危うい。 主権国家として、日本が米国と対等な関係にあるのは自明だ。 しかし、安全保障に関して言えば、有事の際に米国が日本を守り、その代わりに日本が米軍に基地を提供する、という相互補完関係にある。日米安保体制が、戦後日本の「軽武装・経済優先」路線を可能にしたわけだ。 鳩山首相が言うように、米国依存を改め、対等な関係を目指すのなら、北朝鮮などの脅威に備えた自主防衛力の抜本的な強化が必須となる。 防衛費は膨張し、景気対策や社会保障に回すべき予算が圧迫される。さらに、日本の軍事力強化に対する周辺諸国の懸念を増幅させるだろう。 米国との同盟関係を薄めて、対等な関係を築くというのは、現実的な選択ではない。 一方で、日本が経済的に密接なつながりを持つ中国と、「戦略的互恵」関係の強化を進めるのは当然だ。北朝鮮の暴走に歯止めをかけるためにも、中国の協力は欠かせない。 しかし、それ以上に民主主義、人権尊重、思想・信条の自由という普遍的価値を共有するアメリカとの関係強化を、アジア・太平洋の平和と安定の基礎に置く視点が不可欠である。 ◆非常時は大胆な政策を◆ 家電、衣料、食品業界などで、コスト割れの安売り競争が横行している。消費者も、安く買えると喜んでばかりはいられない。弱肉強食、倒産・失業増加、賃下げ、デフレ悪化などの、負の側面を持つ危険な現象だからである。 デフレ脱却には、強力な指導力が不可欠だ。 昭和恐慌時の高橋 残念なことに、鳩山首相からは不況脱出にかける強力なメッセージが伝わってこない。マニフェストに固執する余り、政策の優先順位を決められず、右往左往しているからだ。 新年度予算編成作業でも、マニフェストの柱に掲げたガソリンの暫定税率廃止、子ども手当などを巡って迷走を続け、結局、民主党の小沢幹事長が仕切る形で決着した。政策は政府に一元化、という看板も羊頭 鳩山内閣は官僚との円滑な意思疎通を欠き、情報不足に陥っている。首相や閣僚が「裸の王様」では正しい政策判断はできない。官僚を忌避するのではなく、使いこなすのが政治家だろう。 ◆社会保障を景気対策に◆ 「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズが独り歩きしている。危険なことだ。 公共事業は「土建国家」の悪玉施策と言わんばかりである。吟味は必要だが、地方が疲弊しているときに、即効性が高い公共事業の活用も大切だ。 安心社会づくりで肝心なのが医療、介護、福祉である。社会保障の充実は、安全網の整備に加え景気対策の効果も期待できる。 約600万人が従事する社会保障の分野は、少子高齢化により今後も拡大する。雇用を作り、生産を促し、カネを循環させる機能は、他産業と比べて見劣りしない、といわれている。 社会保障の財源として消費税率引き上げは避けて通れない。鳩山政権は凍結の封印を解き、景気回復後の税率引き上げに国民の理解を求めなければならない。 来年度予算では、大量の国債発行が不可避となった。国債費のうち約10兆円が利払いに充てられている。利払いの負担を軽減するため亀井金融相らが主張するように、無利子非課税国債を発行することも検討に値しよう。 金持ち優遇の批判も予想されるが、約30兆円のタンス預金を国債に吸い上げて活用できれば、景気対策に役立つではないか。 非常時には非常時なりの思考と行動が必要である。ローマ帝国の滅亡を早めた「パンとサーカス」の、大衆迎合的ばらまき・見せ物政治から一日も早く抜けださなければならない。 そうでなければ、眼下の危機を乗り越えることも、明日への責任を果たすこともできない。 (2010年1月1日00時35分 読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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