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天声人語

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2010年1月3日(日)付

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 日本の子どもたちは冬休みのさなかだろうが、古い時代の中国には「冬学(とうがく)」なるものがあったそうだ。農村の子らを農閑期に学ばせるために、冬にだけ開かれる寺子屋のようなものだったらしい▼かの国では、読書にふさわしい季節も冬とされていた。本を読むのに適した「三余(さんよ)」という余暇があって、雨の日と夜、それに冬のことを言った。それなら冬の夜は、またとない好機ということになろうか。江戸時代の日本の漢詩人、菅茶山(かん・さ・ざん)に「冬夜読書」という作がある▼「雪は山堂を擁して 樹影深し」に始まり「一穂(いっすい)の青灯 万古の心」で終わる四行の絶句は、雪の夜に書物をひもとく喜びを伝える。「一穂の青灯」は燭台(しょくだい)の明かり。「万古の心」は書物の伝える古人の思い。歌人の土岐善麿はこのくだりを「ともしびに面影立つや昔びと」と風雅に意訳している▼元日の小紙の別刷り特集が、今年は「国民読書年」だと伝えていた。読むことを通じて豊かな言語力を育むのが目的という。読書は受け身に見えて、実は脳をフル回転させる営みであるらしい▼昨今、言葉で感情を表せずに「キレる」子が目立っている。背景には言語力の低下があるとされる。一方で頼もしい傾向もある。図書館を利用する小学生は、07年に1人あたり約36冊の本を借りていた。これは過去最多という▼巣ごもり派も多かった年末年始、「読み納め」や「読み初(ぞ)め」を楽しまれた方もおられよう。人との出会いはすてきだが、書物との邂逅(かいこう)も捨てがたい。一生ものの一冊に会える読書年であればいい。

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