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社説2 株式市場が映す日本の縮み(12/31)

 大納会の30日、日経平均株価は1万0546円で取引を終えた。年間の上昇率は19%と、米欧をわずかに下回った。80%前後上昇したアジアの新興市場には遠く及ばないものの、先進国で日本の株価が突出して安い事態だけは、何とか免れた。

 だが先行きを楽観するのは早い。企業は昨年秋のリーマン・ショック後の縮み志向から抜け出せず、株価も危機前の水準に届いていない。

 今年7〜9月期決算からはっきりしてきたのは、企業が人件費などを削り、業績の立て直しを急ぐ姿だ。生産が底を打った今も人員増加に転じる気配はなく、「雇用なき回復」のまま越年する。有望な投資先が見つからない企業も多く、リストラで浮いたお金は設備の増強ではなく、借入金の返済に使われている。

 日本市場の構造的な弱さも浮き彫りになった。市場メカニズムを通じてお金を成長企業に回す資本の配分機能がマヒしているからだ。

 トムソン・ロイターによれば、今年の公募増資による調達額は、米欧アジアの合計で、前年から6割増えた。株式の新規公開も3割弱の増加だった。そのなかで日本は、増資が前年の7.2倍に増え、新規公開は5割も減っている。

 売り上げが減った巨大企業や自己資本を積み増す大銀行が市場からお金を吸い上げ、若い企業には届かない。これでは起業の意欲もなえる。政府が戦略分野とする環境・健康・観光などで、リスクをとり事業を始める機運は盛り上がるだろうか。

 今年の大納会は、日経平均が1989年末に3万8915円の史上最高値をつけてから20年の節目。当時より株価は7割も安く、改革の余地がなお大きいことを示している。

 バブル崩壊後の日本市場は、ゆっくりと変わってきた。株の持ち合いが減り、主な株主は銀行や保険会社から、個人と外国人の投資家に変わった。市場から経営への圧力が強まったため、企業はリストラや買収をためらわなくなった。

 東京証券取引所は来年から、売買の処理速度を米英並みに高めた、新システムを稼働させる。これにより、海外からの市場参加者の厚みが一気に増すという。「成長にお金を回す」機能の復活も期待したい。

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