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12月31日付 編集手帳

 「てんでしのぎ」というらしい。てんでバラバラの「てんで=各自」、他人の手を借りず、自力で苦難に対処することを指す。早坂暁さんの「夢千代日記」(大和書房)に教えられた◆海鳴りのとどろく山陰の温泉場を舞台に、テレビでは吉永小百合さんの演じた主人公の芸者・夢千代が語る。〈冬の日本海はきびしくて、沖に出る船は、みんなてんでしのぎです。他の船を助けることが出来ません〉◆仕事の悩みにせよ、私生活の迷いにせよ、肉親も親友も手取り足取りで(かじ)とりはしてくれない。人は誰もが「てんでしのぎ」の船だろう◆働きたくても働けない若者が大勢いて、残忍な事件には心を痛め、新型インフルには身を縮め、明るい出来事は遼君や原ジャパンぐらいしか浮かんでこない一年が暮れる。傷だらけの船体を曳航(えいこう)し、お国なまりと母の手料理が待つふるさとのドックに帰港した人もいるに違いない◆年が明ければ心機一転、また出航のときが訪れる。元日は満月という。月明かりの青い闇を海に、家々にともる窓の()をいさり火に見立て、今宵は除夜の鐘に祈ろう。失意の船に、海路の日和あれ。

2009年12月31日01時17分  読売新聞)
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