仕事納めも終わり、街にはしめ飾りを売る出店も登場した。年の瀬の慌ただしい雰囲気が高まってきた。これから年賀状書きのラストスパートというご同輩も多いだろう▼パソコンで作成して印刷した文面だけでは、さすがに味気ない。必ず一言を添えるようにしているが、毎年、同じ相手に同じことを書いているな、と思わず苦笑した▼書いたのは「今年こそ一杯やりましょう」との一言。おそらく、受け取った側もまた今年も同じこと書いてるなとあきれるだろう。それでも五十円の年賀はがき一枚で、旧友とのつながりを再確認できるなら安いものだ▼あて名を書いていると、今年亡くなった人たちの顔が思い浮かぶ。届いた喪中はがきには、戦後六十年の取材で会った元兵士の方も何人かおられた。もっと聞いておけばと後悔したが、後の祭りだ▼来年は戦後六十五年。敗戦時二十歳の人も八十五歳になる。戦争体験の風化は押しとどめようがない。戦争はリアルな手触りを失い、やがて書籍の中の歴史になるのか▼「腐っても平和がいい」としみじみ語っていた戦艦「大和」の元乗組員がいた。その後に「でもね、腐りすぎると、戦争が始まるんですよ」という言葉が続いた。命を軽んじる社会では腐敗はじわりと進む。政権交代から二年目となる来年は「コンクリートから人へ」を掛け声だけにしてほしくない。