HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 28 Dec 2009 21:16:59 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:写真家の土門拳氏が一九六〇年に出版した写真集『筑豊のこども…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年12月28日

 写真家の土門拳氏が一九六〇年に出版した写真集『筑豊のこどもたち』に印象的な一枚がある。昼休みの教室で弁当を食べる小学生。その中にじっと絵本を読む数人の児童がいる▼貧しくて弁当を持ってこられない子どもが、目のやり場に困らないよう一心不乱に読んでいる。主要エネルギーが石炭から石油に替わり、炭鉱の街には失業者があふれていた▼国の無策への怒りを込め、土門氏が写したのは、救いようのない貧しさが存在した時代そのものだろう。やがて右肩上がりの経済成長が続き国全体が豊かになると、貧困は次第に見えにくくなっていく▼バブル経済が崩壊、長引く不況を経て気付くと、貧困は派遣切りなどの形で再び姿を見せる。労働者の三分の一が非正規雇用、一千万人以上の給与所得者が年収二百万円以下という衝撃の数字がいま目の前にある▼内閣府の調査で「結婚しても必ずしも子どもを持つ必要はない」と考える人は42・8%。九二年の調査開始以来最高だった。背景に、若い世代の経済的な不安もあるのだろう▼政権の目玉政策である子ども手当は、所得制限なしで来年度予算に盛り込まれることになった。子育てを社会全体で支援する理念は賛成だが、欧州で子育て支援策が充実しているのは、高い税負担に支えられている面もある。持続できる制度設計なのか。どうにも心配でならない。

 

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