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普天間移設―本気で「県外」探ってみよ

 米海兵隊・普天間飛行場の新たな移設先を探る政府与党の作業チームが発足した。

 新政権発足後100日以上、迷走を重ねたうえの再出発だ。3年前に日米両政府が合意した名護市辺野古への移設も選択肢として否定はされていないが、まずは沖縄県外に移す可能性をとことん追求すべきである。

 代替案探しは容易ではない。騒音や米兵による事件、事故の危険を考えれば、積極的に米軍基地を受け入れようという自治体を簡単に見いだすことができるはずもない。

 たとえ鳩山政権が新しい移設候補地を決めても、辺野古への移設こそが唯一実現可能な案との立場を崩していない米国側が、それを受け入れる保証はない。多難な交渉になる。

 そうした困難は承知の上で、また日米政府間合意を見直すという賭けをしてでも、在日米軍基地の75%が沖縄に集中する異常さを何とか是正したいということだろう。歴史的な政権交代を機に、鳩山政権がこの難題に挑戦するのは意味のあることだ。

 ただ、大事なことがある。日本防衛や地域の安定のため、沖縄の海兵隊が担ってきた抑止力は何らかの形で補う必要がある。その認識がこれからの検討の基本的な土俵ではないか。

 その点で、鳩山由紀夫首相が先週末、普天間の海兵隊すべてをグアムに移すのは難しいと語ったのは、意味のある論点整理だった。作業チームのとりまとめ役である平野博文官房長官も、そうした論点を重視する考えを示している。

 沖縄の基地負担を本土がどう分かち合うかは、自民党政権時代からの重い課題であり続けてきた。最近、大阪府の橋下徹知事は、沖縄が太平洋戦争で本土防衛の盾となり、激しい地上戦の舞台になった歴史に触れ、関西空港への移設について議論は拒まない考えを示した。

 過去にも、沖縄で行われていた米軍の実弾演習が、北海道や宮城県など本土の5カ所に分散移転されてきた。神奈川県や山口県、青森県なども米軍施設を受け入れている。

 普天間問題にとどまらず、県外移設という目標の持つ、日本全体にとっての重い意味合いを忘れてはならない。

 首相は、5月までに移設先を決めると明言した。夏には参院選を控え、本当に結論を出せるのか懐疑論もある。

 この問題をめぐっては、首相の発言がぶれたり、閣僚の意見が食い違ったりして、外交政策における政権の意思がはっきりしないという困惑を米政府に与えてきた。

 またも迷走するとなると、政権への信頼を失って県外移設の国内調整もおぼつかない。さらなる先送りはとうてい許されまい。政権の信任がかかる。

定数違憲判決―「1人別枠」の是正を急げ

 政権交代をもたらしたこの夏の衆院選で、小選挙区の大阪9区では約9万8千票を取った候補者が次点になり、有権者の最も少ない高知3区では約7万4千票の候補者が当選した。

 二つの選挙区で議員1人当たりの有権者数を比べると、2.05倍だ。「一票の価値」で考えれば高知3区の1票に対し、大阪9区は0.49票で半分の価値しかないことになる。

 この「一票の格差」を問うた有権者の訴えに対し、大阪高裁は違憲の判断を示した。同じ選挙について全国8カ所で争われている定数訴訟の中で最初の判決だ。いまの小選挙区比例代表並立制に基づく衆院選が始まった1996年以降、初の違憲判断となった。

 衆院の一票の格差について、これまでの最高裁判決は「3倍未満」を容認してきた。これに対して高裁が示した基準は「一票の格差が2倍に達する場合は原則として違憲」である。

 判決は、小選挙区制の導入によって有権者の投票行動が政治情勢を大きく変える現状に触れ、2倍の格差を「大多数の国民が耐え難い不平等と感じるようになった」と述べた。

 憲法の基本理念である「投票価値の平等」を厳格にとらえたうえ、政権交代が可能になった政治情勢の中で、一票の重みの増した現状にもあった判断と高く評価したい。

 高裁判決が問題にしたのは「1人別枠方式」と呼ばれる定数配分だ。300議席のうち各都道府県にまず1議席ずつを割り振り、残りの253議席を各都道府県の人口に比例して配分する。単純な人口割りに比べて議員を過疎地に手厚く配置する仕組みだ。

 判決は、これは格差の大きい中選挙区からの過渡期の策で、すでに役割を終えたとし、「国会議員を地域代表と理解するもので、全国民の代表とする憲法の趣旨に反する」と断じた。

 衆院の定数は、02年に小選挙区について5増5減の微調整をして以来、是正されていない。「格差を放置することは立法府のあり方として憲法上許されない」と厳しく指摘した判決に、国会は応えねばならない。

 夏の衆院選で格差が2倍を超える選挙区は45にのぼった。衆院はまず1人別枠方式をやめるよう、法改正に乗り出すべきだ。過疎地の施策については、各議員が「全国民の代表」としてきちんと配慮しなければならない。

 参院の一票の格差はもっと深刻だ。政権交代の前触れとなった07年の参院選では、格差は最大4.86倍もあった。次の参院選は来年夏に迫っており、こちらは待ったなしだ。

 政権党になった民主党は政策集で衆院での1人別枠方式の廃止と、参院では選挙制度の抜本改革を掲げている。年明けの通常国会からさっそく動き出すべきだ。

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