懸案だった労働者派遣法の改正内容が固まった。日雇い派遣だけでなく製造業や登録型も原則禁止とする。問題が多い派遣制度にやっと規制がかかる。政府は引き続き労働者保護を推進すべきだ。
これも政権交代の効果だろう。自公政権下で廃案となった派遣法改正案は日雇いだけを禁止にする緩やかなものだった。今回は民主、社民、国民新三党の連立合意に基づき派遣労働者の保護を強く打ち出した。
労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)がまとめた改正案の骨格は、(1)仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣(2)常用雇用型を除く製造業派遣(3)一日単位から二カ月以内の期間の派遣−をすべて原則禁止とするものだ。
また禁止業務に派遣したり、いわゆる偽装請負などの違法があった場合、派遣先企業は派遣労働者に直接雇用契約を申し込んだとみなす規定も盛り込まれる。施行は公布日から半年以内だが経営側に配慮して登録型は五年間、製造業は三年間の猶予期間を置く。
一連の内容は評価できる。「コンクリートから人へ」と人間重視の政策を掲げる鳩山政権にとって同法改正は真骨頂となろう。
法改正の発端は昨年前半に相次いで発覚した大手派遣会社による違法行為である。昨秋の金融危機では電機メーカーなどで“派遣切り”が続出。失職と同時に住む部屋からも追い出される人が続出した。そして「年越し派遣村」出現は世間に衝撃を与えた。
もうひとつの理由は低所得者層の急増である。年収二百万円以下の働く貧困層(ワーキングプア)が一千万人以上もいる。消費低迷だけでなく少子化、自殺・犯罪増加の一因とされるなど、国としての抜本対策が迫られている。
企業側は派遣禁止は労働者の雇用機会を奪う、と反発する。だが十一月の完全失業率が5・2%、有効求人倍率は〇・四五倍という現状で労働者が「働きたい時に働く」ことができるのか。
賃金コストが高まれば企業は海外へ移転するとも強調するが、海外移転は消費地との直結や円高対策の面が強い。
経営者は直接雇用と長期雇用の原則に立ち戻るべきだ。技術の継承だけでなく、職場の一体感醸成で生産性向上や労働災害の防止も図れる。労働者をモノ扱いしては企業の将来性はない。
政府は派遣労働者に続き、契約社員など非正規雇用労働者全体の待遇改善に努力すべきである。
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