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社説2 疑問残る一律の高校無償化(12/28)

 来年度予算案に高校授業料の実質無償化が盛り込まれた。公立高の場合は年間12万円ほどの授業料が不要となり、私立高の子どもがいても所得に応じて同額かそれ以上を助成する制度が始まることになる。

 焦点になっていた所得制限は「子ども手当」と同じく、結局は見送られた。文部科学省の予算計上額は約3900億円にのぼり、今後は毎年この規模の歳出が必要だ。

 高校進学率は98%にも達するから、義務教育並みに国費で授業料を負担する考えに一理はあろう。民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げてきた重点政策のひとつである。

 しかし厳しい財政状況を踏まえれば、綿密な制度設計もなく公約実現を急ぐ必要があっただろうか。それに一律支援では、ゆとりのある家庭では浮いたお金を塾代など学校外の教育費にも回し、かえって教育格差を広げることにもなる。

 そもそも所得の低い家庭向けには、現在でも都道府県による授業料の減免制度がある。年収350万円以下の世帯などが対象で、支援を受けている生徒は全国の公立高で約1割いる。こうした世帯に限ってみれば給付元が置き換わるだけで新たな恩恵は少ない。

 制度を来年度から導入するにしても、まず都道府県の授業料減免措置を拡充するかたちでの施策とする手もあったはずだ。生活が苦しく授業料の支払いもままならない家庭も、子どもを有名な私立中高一貫校に通わせる高所得の家庭も一律に支援するのには疑問が残る。

 一律無償化と引き換えに、特定扶養控除を縮小して財源の一部をひねり出すことになった。高校生にほぼ相当する16〜18歳の子がいる世帯では控除額を大きく減らす。

 高校無償化との差し引きで、低所得の世帯ほど支援が手厚くはなるが、無償化そのものに所得制限を付けた場合に比べればメリハリに欠ける。高校に通っていない子の家庭は負担増になるといった問題もある。

 ひとくちに高校といっても中身は千差万別だ。その費用をどう支えていくのが適切なのか、教育改革とも絡めた議論を続けるべきである。ただ無償化ありきでは、様々な弊害が出てくるのではないだろうか。

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