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09回顧・日本 越年となる政権迷走と不況(12月27日付・読売社説)

 年末恒例の、読者が選んだ本紙の「日本10大ニュース」の1位は「衆院選で民主308議席の圧勝、歴史的政権交代で鳩山内閣発足」だった。

 新政権は連日、様々な話題をお茶の間に提供した。だが、変革を旗印に政権が発足して3か月余、当初の期待感も薄れ、連立内閣への危うさや不安を感じ始めた国民も多いのではないか。

 ◆政治ドラマに高い関心◆

 民主党が政権公約として掲げた子ども手当、暫定税率廃止、高校無償化などの行方に関心が集中した。年の瀬も押し迫り、同党の小沢幹事長が公約の大幅修正を政府に求めるなど、ドラマを見るような展開をたどった。

 予算の無駄を見直す行政刷新会議の事業仕分けは、華々しさに比して削減額は少なかった。米軍普天間飛行場移設問題では、鳩山首相が結論を先送りし、日米関係は危機的な状況に陥っている。

 政治資金収支報告書の虚偽記入事件で鳩山首相の元秘書2人がそれぞれ在宅起訴、略式起訴され、小沢氏の秘書の公判も始まった。「政治とカネ」をめぐる問題が再燃した年でもあった。

 7位には「高速道『上限1000円』スタート」が入った。車を運転する人などには、それだけ関心事なのだろう。

 前の麻生内閣の施策だが、新政権はさらに進めて無料化を打ち出した。地方の公共交通の足が奪われると懸念されている。

 「天皇陛下即位20年」が6位である。「国民と苦楽を共にする」という考えを貫かれ、「象徴として望ましい天皇の在り方」を求め続けられた20年だった。

 天皇、皇后両陛下のご成婚50年の年でもあり、即位20年と併せて様々な祝賀行事が行われた。

 そんな中で、鳩山内閣が、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見を特別に設定したことの是非が論議を呼んだ。

 2位に入ったのは「日本でも新型インフルエンザ流行」だ。春にメキシコから火の手が上がった感染拡大の波は日本にも押し寄せ、いまも沈静化していない。マスク姿が目立つのも社会現象だ。

 ◆国民が決める刑の重さ◆

 続いて3位には、「『裁判員制度』スタート」が入った。国民が刑事裁判に参加し、裁判官とともに、有罪か無罪か、さらに有罪の場合の刑の重さを決定する。

 「参加したくない」という声もある中で始まった。課題が浮かび上がれば、柔軟に運用方法を見直していく必要があるだろう。

 検察・警察は、裁判員裁判で被告の自白が強制されたものでないことを立証するため、取り調べの一部録音・録画を始めたが、全面可視化を求める声も多い。

 それというのも、10位に入った「『足利事件』の菅家さん釈放 DNA鑑定に誤り」など、冤罪(えんざい)事件が絶えないからだ。

 足利事件では、最新技術を使ったDNAの再鑑定で、精度が低かった捜査段階での鑑定が否定される結果となった。今月に入り、茨城県で42年前に起きた布川事件の再審開始も決まった。

 検察・警察は、これら事件の問題点を検証するとともに、適正捜査を徹底しなければならない。

 5位は「酒井法子容疑者、覚せい剤所持で逮捕」だった。人気女優の逮捕は、テレビのワイドショーなどの格好の題材となった。芸能界の薬物汚染、若者の大麻汚染などが懸念されている。

 1年を通して「不況」の文字が社会を覆った。経済関連は「トヨタが71年ぶり営業赤字 自動車、電機など大手赤字相次ぐ」が16位、「『円』急騰、約14年ぶり1ドル=84円台」が19位、「失業率5・7%、求人倍率0・42倍 過去最悪を更新」が20位だ。

 就職先が決まらない来春卒業予定の高校生や大学生も多い。「就職氷河期」の再来である。

 「デフレ危機」や「ボーナスカット」の言葉も飛び交い、「二番底」の到来が心配されている。産業界などには、政府の成長戦略のなさに対する批判も強い。

 ◆感動を与え続けた野球◆

 上位10位までに野球関連が3本も入った。4位に「日本がWBC連覇」、8位に「イチロー選手が大リーグ史上初の9年連続200安打」、そして「巨人が7年ぶり21度目日本一」が9位だ。

 「ヤンキース松井選手、日本人初のWシリーズMVP」も14位に入っている。野球が国民的スポーツであることの証しでもある。

 暮らしの先が見えない時代にあって、WBCの「侍ジャパン」の活躍などから勇気や感動をもらった人も多かったことだろう。

 問題は新政権である。再ブームとなっている司馬遼太郎の「坂の上の雲」ではないが、この国と国民に、坂の上の雲を目指すような活力を(よみがえ)らせることこそ、来年の課題ではないか。

2009年12月27日00時53分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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