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社説2 歴史に判断委ねた佐藤密約(12/27)

 沖縄返還交渉で当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が交わしたとされる、有事の際の核の再持ち込みに関する密約文書の存在が確認された。外交における「密約」とは何かを改めて問いかける。

 文書は佐藤元首相の1975年の死去後に自宅の遺品の中から発見され、次男の佐藤信二元通産相が保管していた。佐藤元首相とニクソン大統領のフルネームの署名がある。

 日付は69年11月19日付となっている。最も重要なのは「重大な緊急事態が生じた際には、米政府は日本国政府と事前協議を行ったうえで、核兵器を沖縄に再び持ち込むこと、および沖縄を通過する権利が認められることを必要とする」とし、日本政府は「遅滞なくそれらの必要を満たす」と明記している点である。

 沖縄への核再持ち込みの密約は佐藤首相の密使として交渉した若泉敬元京都産業大学教授が1994年に刊行した著書「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」で明らかにしていたが、外務省は一貫して否定していた。文書は佐藤家で発見されており、公的な外交文書の扱いはされていなかったと推察できる。

 したがって佐藤氏が後任首相に引き継ぎ、歴代政権を拘束する約束だったかは明確ではない。

 日本語でいう密約は、例えば広辞苑には「秘密の契約。秘密の条約」とある。明鏡国語辞典には「ひそかに約束すること。また、その約束」とある。引き継がれていないとすれば、佐藤・ニクソン密約は、後者に近い。

 外交における密約が望ましくないのは当然である。だが、佐藤氏は沖縄返還のために、自分限りの約束として署名し、歴史に判断を委ねたのだろう。

 事情を複雑にするのは、密使の存在である。「功」もあるのだろうが、二元外交を招き、交渉過程を不透明にするなど「罪」が多い。若泉氏がかかわったこの文書も私的な文書とされた。公式な外交文書なら原則30年たてば公開されていたはずだが、それがなされなかった。

 外務省の官僚たちに信頼を置かぬ歴代首相は、しばしば密使を使う。外務省と距離をとる鳩山由紀夫首相にも、その傾向がないだろうか。

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