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天声人語

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2009年12月27日(日)付

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 イモムシがチョウになる前、サナギという段階がある。じっとしているうちに、幼虫の体は成虫のそれへと化ける。一変の予感と、先が見えない不安。初めての「鳩山予算」も、どこか危なげな仮の姿に思える▼道路やダムを削り、子ども手当などで社会保障費が膨らんだ。コンクリから人へ、命を守る予算という。歳出が最大となる一方、税収は25年前の水準に落ち込み、国債発行や「埋蔵金」で帳尻を合わせた▼一般会計は92兆2992億円。9と2の連なりに「苦肉」の文字が浮かぶ。ガソリンの減税を見送るなど、金科玉条に見えたマニフェストも傷めた。子どもなし、車ありの喫煙者あたりは、鳩山首相に裏切られた思いだろう▼だが、これは急場しのぎの「サナギ予算」である。生後100日の政権に満点を求めるのは、イモムシに飛んでみせろと迫るにも等しい。重ねた無理と迷走は、欲張りな公約だけが理由ではない。旧政権のお荷物を背負い、景気に足を取られながらも年内に形にしたのだから、まあまあだ▼それにしても、国と地方の借金が来年度末で862兆円とは恐ろしい。このうえ国債を乱発すれば金利が上がり、住宅ローンや企業の資金繰りを圧迫しかねない。埋蔵金は掘り出せばなくなる▼むこう1年は、新政権の、というより日本の行く末を占う正念場である。財政再建と成長の方途を、タブーや聖域なしに固める時だ。その一歩となる次の予算で、美しく、力強いチョウの姿を待ちたい。サナギから、太ったイモムシが出てくる悪夢は許されない。

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