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鳩山由紀夫首相の政治団体に提供されてきた約4億円もの政治資金の処理が違法だったとして、経理を担当した元公設第1秘書らが起訴された。
違法献金の原資に絡んで、実母から受け取った12億円を超える資金が、首相の所得申告から漏れていた事実も明らかになった。
100日を迎えたばかりの政権を痛撃する事態である。
「ご迷惑をかけた方々や国民におわびする。だが、違法献金の事実については、秘書を信頼して任せきりにしていたので、自分はまったく知らなかった。国民から見ると不自然に見えるだろうが、これが真実だ」
そう鳩山首相は会見で繰り返した。だが、毎月1500万円ともいう資金を実母からもらっていて、本当に何も知らなかったのか。政治資金も私的な支出もみんな秘書任せだったのか。
多くの国民は、そんな疑問を今後も持ち続けるだろう。
若手議員時代から政治改革や政治資金の透明化を唱えてきたのは鳩山首相自身である。本人は不起訴であっても、国民の信頼を裏切ったことについて、政治家としての責任は極めて重い。
違法献金の出どころは実母らであり、特定の企業や団体との癒着は東京地検の捜査でも判明しなかった。首相は「私腹を肥やそうとしたのではない」と強調した。
動機はどうあれ、長年うそを書いてきたことは、政治家とカネの関係を国民の監視の下に置くために作られた政治資金規正法を空洞化するものだ。
巨額の資金がどのような政治活動に使われたのかについて、首相は積極的に公表する責任がある。
さらに、提供された資金を長年にわたって申告していなかったことは、納税者からみると、脱税に類する行為とみられても仕方がない。首相は修正申告して6億円を納税するとは言う。しかし、首相はいずれ国民に消費税をはじめとする増税問題を訴えなければならない立場にある。
「政権交代という勇気ある選択をされた国民への責任を放棄することになる」。首相は辞任しない決意をそう述べた。政権交代で就いたばかりの首相をすぐには代えたくない。そういう国民の心情に今後を託したいのだろう。
一方で、首相は「鳩山やめろという声が圧倒的になった場合、やはり国民の声は尊重しなければならない」とも語った。この言葉は重い。
たとえ世論が続投を許すとしても、違法献金事件と所得申告漏れという重い十字架を背負う。全力を傾けて政治の変革を願う有権者の期待に応え、また政治家としての倫理を実践することで傷ついた信頼を取り戻さなければならない。
鳩山政権が最優先課題としてきた子ども手当について、来年度予算案にどう盛り込むかが決まった。
小学生までの子どもがいる世帯には、月5千〜1万円の児童手当を残す。それを月1万3千円の来年度の子ども手当の一部として支給する。児童手当をもらえなかった高額所得世帯や中学生のいる世帯にも、子ども手当を国から支給する。
帳尻合わせのため、子ども手当に現行の児童手当を埋め込んだ。財政難のもとで、地方自治体と企業の負担を残すための苦肉の策である。
子ども手当は、子育てを社会全体で応援し、家庭の負担を軽くするためのものだ。変則的な形ではあるが、国民にとって、地方や企業の負担が残ることに違和感はないだろう。
しかしこの決定は当座しのぎであり、本当の決着ではない。
まず、2011年度から倍額の月2万6千円で本格実施するという手当の財源は確保できていない。他の歳出のカットや税負担の論議が不可欠だ。
しかも、そこでの地方負担や企業負担のありかたは今後の検討にゆだねられた。保育施設の整備など、手当以外の子育て政策をどうするか。そんな大事な方針も定まらないので、先送りするしかなかったように見える。
待機児童は、政府が把握しているだけで約2万5千人、潜在的には100万人もいるとされる。解決に必要な保育所整備については、来年度予算では自公政権時代とたいして変わらない規模の予算しか計上されない見通しだ。
これでは「コンクリートから人へ」という政権公約の基本理念の実現にはなお遠く、少子化に歯止めをかけるような効果も期待できない。
少子化対策には、手当などの経済的支援に加え、保育施設を整備したり夜間や病気の時の預かりを充実したりして、女性の仕事と家庭の両立を助けることが必要だ。出生率を上向きに転じさせたフランスや、スウェーデンの経験からもそれは明らかだ。
一方、今後の地方負担については、原口一博総務相が「子ども手当は国庫負担、保育サービスは地方負担」を基本に、施設やサービス面はほぼ全面的に自治体が責任を持つという案を予算編成の過程で提唱した。
厚生労働省や保育関係者は「自治体格差が広がる」などと反発したが、総務相案は11年度以降に向けて大いに検討に値する考え方だろう。
民間から提唱されている「子育て基金」構想も検討すべきだ。社会全体で子育てコストを負担するため、国と地方、企業からの拠出金を集め、基金として一元管理する方式だ。
保育の充実も含めた財源とその分担方式を決めてはじめて、「子ども手当」問題は決着する。