鳩山政権初の税制改正大綱が財源不足の逆風の中で決まった。ガソリン暫定税率の実質維持は公約に反するが、子ども手当など新たな理念も打ち出した。「社会で子育て」をじっくりと見つめたい。
中学校を卒業するまで月額一万三千円、二〇一一年度からは満額の二万六千円を支給する。各種データや欧州を参考に算出したものだ。与党・民主党が求めていた高額所得者を対象からはずす所得制限も見送った。困窮者支援ではなく「子育ては社会全体で支援」を明確にした。
日本の社会福祉予算に占める子ども向けの割合は4%。10%超の英国やフランスの半分に満たない。子どもたちへの手厚い配分は、税や社会保障の将来の担い手を育てることにもつながる。
子ども手当の財源との関連で検討された配偶者控除の廃止・圧縮は先送りされたが、夫が働き、妻は家事という旧来の家庭像から共働きへの移行が視野にあり、発想を大きく転換したといえる。
少子高齢化という将来を見据えた設計とされ、決断には賛否両論があるものの、ひとまずは評価すべきだろう。試行錯誤は避けられないが、不断の改善に努めるよう望みたい。
ガソリンなどの暫定税率実質維持で減税二・五兆円が取りやめになった。財政逼迫(ひっぱく)の折、国民の多くは実現に半信半疑だった。
首相は導入を検討している地球温暖化対策税(環境税)について「一年以内に結論を出したい」と述べており、将来はガソリン税などを環境税に衣替えさせるようだ。とはいえ、一リットル=二十五円の減税公約から逸脱しており、首相が宣言した税の「公平・透明・納得」に沿って、公約逸脱を国民に丁寧に説明すべきだ。
深刻なのは財源の確保だ。たばこ税を過去最大の一本当たり五円程度引き上げ、財源確保を当て込んでいるが、税収は不況で歳出の半分以下の四十兆円を大幅に下回る公算が大きい。景気が急速に回復しない限り、来年以降も逆風が吹き続けるだろう。
鳩山政権は消費税引き上げを封印した。公約実現には財源が欠かせない。所得税のあり方も含め安定財源確保の道筋を探る議論まで封じるべきでない。
自民党時代、学者らで構成する政府税調は有名無実で全権は党税調にあった。鳩山政権では制度改正が政府税調に委ねられ、中心は政治家だ。政治主導を発揮し機能するよう期待に応えるべきだ。
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