HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 23 Dec 2009 23:15:56 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:10%減税成立 地方自治は変わりうる:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

10%減税成立 地方自治は変わりうる

2009年12月24日

 河村たかし名古屋市長が目指す市民税10%減税の条例案は市長原案通り可決された。減税は従来の行政ではほとんど“常識外”とみられたが、全国で初めて実現した。自治の変革として注目したい。

 市民税減税は、四月に同市長選で史上最多の五十一万票を獲得して当選した河村市長の最大の公約だった。六月と九月の市議会では先送りされ、十一月議会では市長案でなく、野党会派の自民と公明が出した修正案が可決された。

 修正案は高所得者ほど減税額は多く、低所得者には少額になる一律減税の欠点を直そうとした。

 これに対し、河村市長は「減税は福祉政策ではない。低所得者向けの福祉は別にちゃんと行う」と頑として譲らなかった。市長が拒否権に当たる再議を求めて開かれた今回の臨時議会では、修正案は再可決に必要な三分の二を得られなかった。自公は「議論を堂々巡りさせるべきでない」と与党会派の民主とともに賛成に回った。

 一方、市議会の議論を経て、市民にも問題点がよく分かり、減税条例の付帯決議は十分な福祉政策を市長に約束させた。

 紆余(うよ)曲折を経た議論は、河村市長当選の「政権交代」で「名古屋は変わった」と物語る経緯と結論となった。

 過去二十八年間、ほぼオール与党だった市議会が、民意を味方につけねば説得力を持たぬことに目覚めたともいえる。これからは百六十億円の減税財源を含む来年度予算案をよく監視してほしい。むだを削るという視点だけ強くなり弱者にしわ寄せが来るということだけは避けなければならない。

 全国初となる恒久的な減税は来年四月から始まる。年収七百万円の夫婦と子ども二人の給与所得者の場合、年一万八千百円の減税となる。これがどの程度の恩恵であり、また景気の回復につながるかは全くの未知数だ。

 しかし、その額以上に重要なことは「お役所仕事には、まだむだがあるはず」「民間と同様、一円でも安く行政を行う努力をして当たり前」という市民の常識が、行政をともかく変えたということだ。役所も役人も、これを機に税の使途についてこれまでの意識を変えてほしい。

 中央では鳩山政権もマニフェスト(政権公約)実現に四苦八苦しているし、変革を訴えて誕生した各地の首長の多くも苦労している。地方自治は変わりうることを「10%減税」は示している。

 

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