鳩山由紀夫首相が就任してあすで百日を迎える。民主党は衆院選で政策決定を内閣に一元化することを訴えてきたが、予算編成や税制改正をみると、首相が内閣主導に徹し切れたか、疑念が残る。
大胆な歳出削減による財源捻出(ねんしゅつ)で、衆院選マニフェストに盛り込まれた政策が次々と実現する。民主党に政権を託した有権者は、自民党時代とは違う、そんな政権像を描いていたに違いない。
廃止されるはずだったガソリン税の暫定税率は、仕組みを変えて事実上残ることになった。
化石燃料の減税は当初から賛否両論があったものの、一度約束した減税の断念がマニフェスト破りなのは首相自身が認める通りだ。
昨年秋以降の世界同時不況による税収不足で、財政事情が厳しいことは理解する。歳出を徹底的に絞り込んだ上で、やむを得ず税率を維持するというのなら分からなくもないが、無駄の排除にどこまで真剣に取り組んだというのか。
行政刷新会議の事業仕分けは注目を浴びたが、歳出削減は六千九百億円にとどまった。首相が、削減額の上積みに粘り腰で挑んだ姿は、残念ながら見られない。
自民党政権時代にはなし得なかった「成果」とはいえ、前評判が高かった分、失望も大きい。
同時に、政策決定の最終場面で民主党の小沢一郎幹事長が表舞台に出てきたことも、内閣主導の政策決定という民主党の主張に疑問を投げかけている。
首相は暫定税率維持や子ども手当に所得制限を設けない決断を小沢氏に伝え、内閣主導を演出したが、小沢氏から了承を取り付ける儀式との見方はぬぐえない。
国家戦略局が戦略室にとどまり、十分機能していないことも、内閣主導の確立を遅らせている。
報道各社の世論調査では内閣支持率は発足時の70%台から50%前後に下落した。背景には首相の指導力に対する国民の失望がある。
マニフェストは四年間で実現する国民との契約だ。初年度から完璧(かんぺき)にこなすことは難しい。
とはいえ、首相の決断力、指導力が疑問視され続けるなら、支持率下落に歯止めはかけられまい。
米国流に言えば、メディアが激しい批判を控える百日間の「ハネムーン(蜜月)」は終わった。
首相は、年明けに始まる通常国会を正念場と見定め、内閣主導の政策決定確立に向けて態勢立て直しを急ぐべきだ。
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