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北朝鮮の武器―監視の国際連携を強めよ

 北朝鮮を源とする国際的な武器取引の深い闇の一端が明るみに出た。

 今月中旬、平壌を飛び立った貨物機が給油のためバンコクの空港に降りた。「石油掘削機器」と申告された積み荷をタイ当局が調べると、北朝鮮製の兵器が大量に見つかった。対戦車ロケット砲、地対空ミサイルなどで、35トン、十数億円相当になるという。

 貨物機の所有元はたびたび変わり、現在はグルジア企業の所属だ。これまでに何回か北朝鮮との間を行き来していたこともわかった。乗員はベラルーシ人とカザフスタン人だった。

 運び先ははっきりしないが、武器の移転を追跡している米欧のNGOは入手した飛行計画の情報から、スリランカやウクライナなどを経てイランで荷を下ろす予定だったとしている。

 この事件で見えてくるのは、北朝鮮からの武器の拡散、そして旧ソ連の武器商人らがかかわる密売ネットワークの存在である。

 北朝鮮が今年5月に強行した2回目の核実験を受け、国連の安全保障理事会は制裁を強める決議を全会一致で採択した。これにより、北朝鮮はすべての武器輸出を禁じられた。

 今回の事件はこの決議に完全に違反する。しかも、ボズワース米政府特別代表が核問題をめぐる協議の仕切り直しのため平壌を訪れた前後の出来事である。国際社会を愚弄(ぐろう)する行動だ。

 北朝鮮の武器輸出は中東やアジア、アフリカに広がっていると韓国政府はみている。一時期は年間5億ドルを輸出したという。近年は減ったようだが、それでも貴重な外貨獲得源であり続けているに違いあるまい。

 現にこの夏、大量破壊兵器の関連物資を積んだと疑われる北朝鮮の貨物船が中国の沖合で米艦に追跡されたり、アラブ首長国連邦ではイラン向けとされる北朝鮮の武器を積載した第三国船が拿捕(だほ)されたりもした。

 武器売買の実態はなかなか表には出てこないだけに、タイ政府には真相の究明に努めてもらいたい。

 摘発には米政府の情報提供が功を奏したという。それだけ各国の連携の必要性と大切さを示すものだ。

 国際的な協力態勢をさらに強めて、安保理決議の実効性を高めることは重要なことだ。陸海空の監視を着実にしていかなければならない。

 決議は、必要な場合に公海上で船舶の貨物を検査することを加盟国に求めている。鳩山内閣は先の臨時国会に、決議に基づく貨物検査法案を提出したが、継続審査となっている。年明けの通常国会で成立させたい。

 北朝鮮が日本などの企業から兵器開発に転用できる機械を調達し、企業が摘発された例もある。武器移転の監視と一体に、武器の開発面にもしっかり目を向けることが大事だろう。

宇宙長期滞在―日本の飛躍につなげたい

 野口聡一さんが、ロシアの宇宙船「ソユーズ」で国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。そこで5カ月間の活動を始める。

 日本人が宇宙に長期間滞在するのは、7月まで約4カ月半滞在した若田光一さんに続いて2人目だ。

 2011年に古川聡さん、12年には星出彰彦さんと、それぞれ半年間の滞在が決まっている。見上げた宇宙に日本人がいることが決して珍しくなくなったということだ。

 考えてみたいのは、そうした時代になったことの意味は何か、それを日本の将来にどう生かすのか、だ。

 宇宙は、科学と技術の挑戦の場であり、短期的な成果だけで判断するのはふさわしくない。しかし、ISS計画には財政難の中で毎年400億円の巨費を投じていくのだから、投資を生かし切る努力が欠かせない。

 単にこれまでの延長ではなく、宇宙での活動を幅広い視野で見直す柔らかい発想を持ちたい。

 ISSに実験室を持つのはアジアでは日本だけだ。それを考えれば、ISSという場を戦略的に活用する、斬新なアイデアがほしいところだ。

 たとえば、アジアの人たちに使ってもらってはどうだろう。ISSでの実験にアジア枠を設けて広く公募してもいいし、アジアの若者に宇宙飛行士として参加してもらうことも考えていい。アジアの優秀な頭脳を生かし、アジアに対する日本の貢献策にもなる。双方にメリットが大きいはずだ。

 一方、今回の野口さんの飛行では、古いが安定したロシアの宇宙技術が改めて注目を集めた。

 何度でも使える宇宙船をめざした米国のスペースシャトルは初飛行から30年目の来年、引退する。1回の打ち上げ費用は約900億円と高価で、事故も2回あった。

 これに対して、ソユーズは半世紀以上、基本的な設計が変わっていない。打ち上げ費用は1回数十億円と安いうえ、40年近く無事故だ。

 今後は、こうした独特の技術思想を持つロシア、あるいはISSのパートナーでもある欧州と、互いの持ち味を生かせるような協力をもっと深めたい。日本には、ISSの実験棟「きぼう」の完成度の高さや、9月に初飛行に成功した無人輸送機HTVなどで国際的に評価された高い技術力がある。それをうまく生かしたい。

 ISS後の有人活動については、オバマ米政権の方針次第だが、日本にとっては、こうした国際協力が重要なことだけは間違いない。

 日本では現在、ロボットによる月探査計画の検討が進められている。国産の技術を伸ばし、日本の飛躍にもつながる、そんな大きな宇宙開発の戦略を描きたい。

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