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天声人語

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2009年12月23日(水)付

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 不況風がつめたい師走の街で「せんべろ酒場」が人を集めているという。千円でべろべろに酔える、を略したらしい。定義はないが、安くて、チェーン店でないのが条件のようだ。らしき店の暖簾をくぐると、モツの煮込みが250円など、手頃な値段に頬がゆるむ▼手元の辞書を引くと、「べろべろ」は酔ってろれつが回らない状態をさす。酔態の表現にも使い分けがあって、「ぐでんぐでん」は正体を無くした様子を言うそうだ。財布にやさしい「せんべろ」でも、酔い加減はやはり「ほろり」程度が賢明である▼酒の功は限りないが、罪もまた多い。「百薬の長とはいへど、万(よろず)の病は酒よりこそ起これ」と古くに戒めたのは「徒然草」の兼好法師だった。近年は、アルコール依存症患者の増加が深刻になっている▼「予備軍」を含めると440万人にのぼるという。自殺の背景になることも多く、もはや「飲んべえ」などと、のどかに呼べない人も少なくないようだ。克服するには、しっかりした治療と支援が欠かせない▼とはいえ厳しい年の瀬に、語らい、労をねぎらい合う一杯はうれしい。腹に下りて、胃の形が分かるほどにじわっと広がる熱燗など、何ものにも代え難い。〈おでん酒酌むや肝胆相照らし〉誓子。冬の巷の幸いである▼漢詩にちなんで酒のことを「忘憂」とも言う。しかし兼好法師は「酔っぱらいは昔の憂さを思い出して泣く」と手厳しかった。冬至も過ぎて、忘年会はそろそろ最終盤だろうか。憂さに負けない笑顔の杯を、ほどほどを旨に楽しまれたい。

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