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沖縄返還をめぐる日米密約の決定的な証拠文書が見つかった。
当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が沖縄返還に合意した1969年に交わした合意議事録の現物だ。「重大な緊急事態」の際は米国が沖縄に再び核兵器を持ち込むことを認める、と約束している。
この密約の存在は、佐藤氏の密使としてキッシンジャー大統領補佐官との交渉にあたった故若泉敬・元京都産業大教授が90年代に著作の中で明らかにした。しかし、日本政府は否定を続け、米国側の情報公開でも、この文書の存在は確認されていなかった。
鳩山政権は、自民党政権時代の日米密約の解明作業を続けている。すでに、核を積んだ米艦船の日本寄港や領海通過を事前協議の対象外とする密約を裏付ける関連文書がみつかっている。だが、40年の時を経て密約そのものの文書が発見された衝撃は深い。
英文でタイプされた文書には、両首脳の署名もある。再持ち込み先として、日米合意で普天間飛行場の移設先とされた辺野古をはじめ嘉手納、那覇などの地名も挙げられている。極秘とすることも念押しされている。その生々しさには息をのむばかりだ。
東西の冷戦下で、当時はベトナム戦争が激しくなっていた。米側は佐藤氏が求めた「核抜き本土並み」返還を受け入れ、沖縄県内の米軍基地からの核兵器の撤去に応じた。その代わり、有事の際の再持ち込みへの確約を日本の首相からとりつけていた。
米国の軍事戦略にとって沖縄がどれほど重要か、そして返還後もその役割をできるだけ減じたくなかった米政府の思惑を、鮮明に映し出している。
自らの手でなんとしても沖縄返還を果たそうとした佐藤氏は、米側の要求をのみ、非核三原則との矛盾を隠すために「密約」として国民を欺く道を選んだことになる。
鳩山由紀夫首相や岡田克也外相は、外務省の有識者委員会に密約の真相解明を委ねる考えを示した。
確認すべきは、この秘密合意が日本政府の中でどのように引き継がれてきたのかだ。歴代首相や外交当局者は国民に真実を語ってほしい。
さらに重要なのは、密約が現在もなお法的な効力を持つものなのかどうかについて、日米両政府が協議し、見解を一致させることだ。
当時と今とでは、安全保障環境も核兵器の運用も大きく異なる。現実問題として米国が日本に核兵器の持ち込みを求める可能性は極めて低い。しかし、だからといって密約と非核三原則との矛盾を放置はできない。同盟に対する国民の信頼も揺らぎかねない。
鳩山政権の普天間移設問題への姿勢をめぐって日米関係がきしんでいる時だからこそ、賢明な対処を望む。
政府税制調査会が鳩山政権として初の税制改正大綱を決めた。焦点だったガソリン税などの暫定税率は廃止するが、新たな措置で同規模の税収を維持することになった。
政権公約通りにガソリン税を下げる方針を貫くかに見えた鳩山由紀夫首相は、一転して公約を実現できなくなったことについて「率直におわび申し上げねばならない」と語った。
政権公約の目玉のひとつを変えた以上、その理由を首相は国民にていねいに説明せねばならない。
だが、暫定税率の廃止にはもともと無理があった。廃止すればガソリンは値下がりで需要が増え、首相自身が力を入れる温暖化対策と矛盾する。税収は地方税を含め年2.5兆円も減る。不況で法人税収などが激減するなか、「国債発行は44兆円まで」という予算編成方針は守れない。
本来、民主党が掲げる環境税の導入方針とセットで暫定税率の廃止を打ち出す道もあった。結局、民主党の小沢一郎幹事長からの要望を受け入れる形で事実上の税率維持を決めたことは、政府の政策形成力の弱さを示す事態だといえよう。
そのおかげで来年度予算編成の足場はなんとかできた。だが、迷走劇から浮かび上がった「構造的な財源不足」という大問題に、鳩山政権は全く答えようとしていない。ほんとうに深刻な問題はそこにある。
たとえば、「コンクリートから人へ」の目玉政策である子ども手当を恒久的な制度とするには、2011年度以降、毎年5兆円の支出を支える恒久財源が必要だ。しかし、その財源は確保できていない。
財政事情はますます悪化している。今年度は税収が当初見込みより9兆円少ない37兆円にとどまり、新規国債発行(新たな借金)は53兆円超に膨らむ。税収より借金が多いという終戦直後以来の異常事態だ。
鳩山政権は来年度予算の概算要求額を事業仕分けで圧縮したが、全体の削減額は6800億円にとどまった。政権公約では、「無駄の削減」で数兆円もの財源を生み出せるとしていたが、現実はそれほど甘くない。そのことも、事業仕分けの貴重な教訓として受け止めるべきだ。
毎年度30兆円規模の借金が新たに生じている国の財政事情から見ても、いずれ増税は避けられない。とりわけ有力なのは、法人税や所得税より税収が安定している消費税だ。
消費増税を先送りしてきた自公政権も、社会保障のほころびを直す財源としてその必要性は認めていた。
税収増分を歳出に回せば、増税による景気への影響を相殺できる。世界同時不況を脱却したら実施できるよう、消費増税の検討を進めるべきである。