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【社説】

COP15閉幕 相互信頼で再挑戦を

2009年12月20日

 コペンハーゲンの気候変動枠組み条約第十五回締約国会議(COP15)は、完全な決裂だけは免れた。再開会合へ、残された小さな希望を育てたい。

 一九九七年暮れ、われわれは京都で開催されたCOP3で、史上初めて法的拘束力のある温室効果ガス削減目標を定めることに成功し、世界が協調して未来をひらく希望をかみしめた。

 あれから十二年、京都の希望をつなぐべきコペンハーゲンで、今度は苦い失望を味わっている。人間は本当に未来へ向かって進んでいるのだろうか。

◆京都の希望はどこへ

 京都議定書の約束期限が切れたあと、二〇一三年以降の温室効果ガス削減ルール(ポスト京都)を盛り込んだ新議定書の採択は、初めから断念し、来年につなぐ緩やかな政治合意がCOP15の目標だった。が、それさえままならぬほど、先進国と、中国率いる途上国グループの間の溝は深かった。

 途上国グループは「温暖化の責任は先進国にある」として、ポスト京都で何らかの削減義務を課されることを、相変わらず一切拒絶した。また、自主的な削減目標は打ち出すが、第三者の検証は受け入れないという、強硬姿勢に終始した。

 オバマ米大統領は、温暖化対策に消極的な議会への配慮から、こと温暖化問題に関しては、得意の弁舌を封印した感がある。温暖化対策に積極的な欧州連合(EU)さえ、せっかく築いた排出権市場を守るため、中国などが主張する途上国側に削減義務のない京都議定書の単純延長に傾いた。議論を重ねるごとに、それぞれのお家の事情、国益だけが次第にむき出しになり、京都で芽生えた「地球益」はやせ細る。

◆継続の芽は残った

 百二十人もの首脳級が夜を徹して議論を続け、完全な決裂だけは避けられた。しかし、日米欧、中国、インドなど二十六の主要排出国間で合意、全体会議で「留意」を決議した「コペンハーゲン協定」は、議論継続の足掛かりというだけで、拘束力も持っていない。

 先進国から途上国へ、二〇年までに年間一千億ドル(約九兆円)規模の支援をめざすという。金額だけは具体的だが、財源や内訳は定かでない。二〇年までの削減義務はおろか、五〇年までの長期目標にも触れていない。ポスト京都をいつまでに決めるのか、その期限も示されてはいない。

 一方、中国もインドも決裂は望んでいなかった。オバマ大統領が「歴史上初めて、温暖化の脅威に立ち向かうことを決めた」と語ったように、本当の議論はこれからだ。この高価な冷却期間に、もう一度、よく考えてもらいたい。

 「科学的な見地に立ち、気温上昇を二度以内に抑える」と協定にもあるではないか。さもなくば、先進国も、途上国もなく、地球全体を巨大な災厄が襲うだろうと、最新の「科学」は告げている。

 もちろん時間に余裕はない。合意が一年遅れると、世界は五千億ドル(約四十五兆円)の費用負担増を強いられるという試算もある。温暖化対策を進めることこそ、国益を守ることにほかならない。

 温暖化の災厄はすでに現実のものである。氷河が消え、氷山が流れ出し、各地で異常気象が起きている。自然災害や生態系の乱れは激しさを増している。「この交渉に、生存がかかっている」と訴えた太平洋やカリブ海の島国の声は、真摯(しんし)に受け止めねばならない。

 京都議定書で削減義務を持つ国の排出量は、全体の三割弱だ。単純に延長しても、到底「科学の要求」は満たせない。それぞれ二割ずつを占める米中両国の責任は極めて重い。先進国中の先進国である米国はもちろん、間もなく世界第二位の経済大国に躍り出る中国は、もう途上国ではない。「大国」としての責任を負い、果たし、アフリカ諸国などに対して真のリーダーシップを示してほしい。

 鳩山由紀夫首相が掲げた「二〇年に九〇年比25%」という野心的な中期削減目標は、確かに米中などへの刺激になった。だが「方策が不確かで、あいまいだ」という中国の批判にも一理ある。

 実現へのメニューと費用、暮らしへの負担を国民に示し、必要な法制度を整えて、あらためて世界に問い直すべきだ。

◆もう一度首脳が会して

 ポスト京都の取りまとめに向けた国連の作業部会は今後も続くという。だが、COP15で明らかになったのは、ポスト京都はもはや、首脳間で話し合うべき問題であるということだ。トップ同士の継続的な意思の疎通が、出口を開くかぎになる。来年の早い時期に、首脳が集まる会合を開き、取りあえず「政治合意」に再挑戦してもらいたい。京都の希望を、もう一度実感できるよう。

 

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