「ジョージアで一休み」。そんな宣伝文句の缶コーヒーのCMがテレビに流れたのは、1990年代半ば。これをきっかけに売り上げは大きく伸びた。商品名入りの景品のプレゼントに4400万通も応募が集まり、宣伝作戦は当たった。
▼発売元の日本コカ・コーラ会長、魚谷雅彦氏が近著で成功の理由を挙げている。米国本社の意向と違って、ホワイトカラーの需要も狙ったこと。20代社員の提案を受け入れて、自分が名前を知らなかった飯島直子さんをCMキャラクターに起用したこと。そして「時代の空気」を的確にとらえたことだったという。
▼当時はバブル崩壊の後だ。リストラが進み、賃金もカットされる。何も悪いことはしていないのに、なぜリストラや賃下げに遭わなければならないのか。多くの人がそう思う中、「頑張れ日本のサラリーマン」などと呼びかけてもむなしい。皆コーヒーを手に一息つきたいのでは。この読みが当たったと振り返る。
▼今年、別の缶コーヒーメーカーが、女性社員の笑顔に同僚の男性らがホッとするというCMを放映し、売り上げを伸ばしている。女優の小雪さんを起用し、やすらぎを前面に出したウイスキーのCMもハイボール人気を復活させた。十数年前と同様、先行きへの不安から人々がやすらぎを求めている表れだろうか。