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天声人語

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2009年12月21日(月)付

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 要するに、肝心なことは先送りらしい。COP15と呼ばれる温暖化防止の国際会議である。京都議定書に続く約束はまとまらず、次善の合意文書も、採択ではなく「留意する」にとどまった。首脳が集まっての足踏みだけに痛い▼二酸化炭素を出し続けてきた国々にとやかく言われる筋合いはない。これが途上国の本音だろう。さあ発展という時に、環境という名の枷(かせ)をはめられては困ると。こうした主張を代弁する中国は、今や温室効果ガスの最大の排出国である▼片や先進国代表として範を垂れるべき米国は、産業界に押されて京都議定書を袖にし、次なる削減目標も日欧に見劣りする水準だ。両排出大国の「偏り」が、温暖化と闘う気勢をそぐ▼来年のCOP16に向けて仕切り直すという。しかし、15でだめなら16や17がある、という考えは危うい。〈十五、十六、十七と、私の人生暗かった……〉。藤圭子さんのかれた歌声を思い出す。〈過去はどんなに暗くとも、夢は夜ひらく〉と続くのだが、人類に夢を見ている暇(いとま)はない▼交渉の間にも極地の氷は解け、海水の酸性化が進む。多発する洪水や干ばつは新たな貧困と紛争を生み、つまりは世界が荒れる。破局への歯止めと緊張を欠いた先送りは後退にも等しい▼命にかかわる会議に出られない点で、将来の世代は動植物と変わらない。閉じた地球。空や海の包容力にいつまで甘えられるのか。そういえば藤さんの娘、宇多田ヒカルさんが〈時間がたてばわかる〉と歌っていた。この言葉、いつも前向きな意味とは限らない。

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