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COP15閉幕―来年決着へ再起動急げ

 コペンハーゲンで開かれた国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)は、決裂寸前の土壇場で主要国が何とか政治合意をまとめた。全締約国がこれに「留意」することで一致したが、温室効果ガスの排出削減をはじめ重大な懸案を来年に持ち越した。

 ここで立ち止まるわけにはいかない。世界の国々はCOP15の教訓に立って、来年に向け交渉努力を倍加しなければならない。

 地球温暖化を放置すれば、世界各地で洪水や干ばつが起き、紛争や貧困が広がる。生物の多様性は失われ、人類の繁栄が持続不能に陥りかねない。

 現行の京都議定書は2012年で終わる。新たな国際枠組みに早く合意しないと、13年以降、温暖化防止の取り組みが途絶える。

 だからこそ歴史的な首脳会議が開かれた。119カ国の首脳が演説しただけでなく、二国間や主要国間で精力的に協議を重ね、文字通りの首脳外交を展開した。温暖化問題はまぎれもなく、戦争と平和の問題、世界規模の経済危機に匹敵するほど差し迫った外交課題に押し上げられた。

■課題は積み残された

 とはいえ、首脳たちが討議しても思うようには進まない。それぞれの立場と利益がかかる温暖化問題の複雑さが改めて浮き彫りになった。

 首脳会議に先立つ閣僚らによる交渉では、先進国と途上国が激しくぶつかりあった。決裂すれば、1992年の気候変動枠組み条約から97年の京都議定書を経て築いてきた温暖化防止の国際体制が崩壊する恐れさえあった。

 最終日まで会議場に重苦しい空気が漂ったが、それを救ったのが米国、中国、インドを含む主要国による「コペンハーゲン合意」だ。「決裂は避けたい」との首脳外交が実った。

 ただ、この合意そのものは「窮余の一策」であり、懸案の多くが積み残された。新たな国際枠組みをつくる困難な作業はこれからである。

 具体的な成果として目立つのは、「12年までの3年間に300億ドル」「20年時点で年1千億ドル」という先進国から途上国への支援策くらいだ。

 温室効果ガスの削減については、これまで同様、「産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑える」という点を再確認したにとどまった。

 世界全体の削減量については「大幅な削減が求められる」としただけで、「50年に半減を」という国連の科学者会合が示した認識は共有できなかった。先進国による20年までの削減の中期目標も、来年1月中に報告するよう各国に求めただけだ。

 しかも、この合意に一部の国々が強硬に反対し、全体会議での公式採択に失敗、各国が「留意」するという弱い位置づけになった。

 ■中国は責任を行動に

 先進国と途上国の激しい対立の陰には、米国を抜いて世界最大の排出国になった中国の存在がある。

 中国は途上国グループ「G77プラス中国」を率いたほか、ブラジルや南アフリカ、インドとともに新興国グループ「BASIC」を立ち上げた。排出削減を求める先進国の声に対抗するねらいがあってのことだろう。

 経済成長が体制の安定に欠かせない中国にとって、排出削減を義務づけられるのは困る。新興国の削減行動や、その監視体制を合意に盛り込むことには、最後まで抵抗した。

 途上国は、先進国が資金支援の規模を表明し歩み寄りを図っても、乗ってこなかった。むしろ先進国に削減目標の上積みを求め、先進国だけに削減を義務づけている京都議定書の延長を強硬に主張した。こうした強気は、中国という後ろ盾あってのことだろう。

 交渉の動向が中国に左右された背景には、排出量2位の米国の指導力が及ばなかったこともある。

 米国は排出削減の中期目標で、日欧より低い数字しか示していない。合意づくりへオバマ大統領は積極的に動いたが、温暖化防止の国内法成立が遅れており、先進国のリーダーとして中国の説得にあたるには足場が弱すぎた。

■日米連携を組み直せ

 温暖化をめぐる外交の構図が大きく変わったことを直視しなくてはならない。新興国の今後の排出量が温暖化の程度を左右するなか、外交力を強めつつある新興国をどのように説得するか。戦略を練り直す必要がある。

 日本は20年までに排出量を25%削減するとの表明に加え、12年までに約150億ドルの途上国支援を打ち出し、世界から評価された。

 ただ、米軍基地問題でのきしみもあってのことか、COP15の場で日米首脳会談を開けなかった。日米で中国の説得にあたれなかったのは痛手だった。連携の組み直しが不可欠だ。

 一方、新興国にも責任ある行動が求められる。特に中国には、大国にふさわしい度量がほしい。自らの利害と思惑を優先してパワーゲームを展開するのでなく、交渉が前進するよう途上国や新興国を引っ張ってもらいたい。

 「2度以内」の達成は世界共通の利益だ。大局的視点から国際政治を動かし、国内の利害も調整できるのは各国の首脳たちをおいて他にない。

 COP15の教訓を踏まえて早期に交渉を再起動し、首脳の責任で協議を進めて、1年以内に法的拘束力のある国際枠組みをつくらなければならない。

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