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12月19日付 編集手帳

 俳優の芥川比呂志さんは酒が入ると少々からむ癖があったらしい。その人がいると知らず、小沢昭一さんがすし屋に入ったところ、すでに酩酊(めいてい)して目の据わった芥川さんが「おいっ、小沢ッ、昭一ッ」と、いきなり怒鳴(どな)った◆小沢さんは間髪入れず、「芥川比呂志、ばんざぁいッ、ばんざぁいッ…」万歳を唱えながら店を出たと、劇作家の大西信行さんが随筆に書いている。難を逃れるための、これも芸だろう◆忘年会のシーズンも終盤を迎える。からみ癖のある上司や同僚が職場にいる人には、気の重い季節かも知れない◆不況下、会社の会議室などを使った簡素な忘年会が人気を呼んでいると、何日か前の本紙(東京版)にあった。いささか解放感には欠けても、1人3000円ほどで済む負担の軽さに加え、場所柄ゆえの節度とたしなみが保たれるとすれば、数少ない不況の功徳と言えなくもない◆歌人の篠弘さんに一首がある。〈酩酊のポーズをとりし背の芯に浴びせられたる声を忘れず〉。何かと心のささくれ立つことの多いご時世、怨念(おんねん)を忘れない“忘念会”にならぬよう、いつにも増して用心がいる。

2009年12月19日01時39分  読売新聞)
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