民主党が来年度予算編成と税制改正でガソリン暫定税率維持と子ども手当の所得制限導入を打ち出した。政権公約(マニフェスト)とは食い違う。なぜ路線変更したのか、しっかり説明すべきだ。
予算編成が進まず、どうなるのかと心配していたら、民主党から思い切った政府への要望が出てきた。ガソリン暫定税率の廃止も子ども手当も先の総選挙で民主党が掲げた公約の目玉案件である。
景気悪化で税収が激減する中、背に腹は代えられない財政事情は分かる。「高所得者に子ども手当は必要ない」という議論にも一理あるだろう。
経済政策は景気動向に応じて柔軟に実施するのが基本だ。公約に掲げたからといって、なにがなんでも断行するかたくなな姿勢でいる必要はない。ガソリン税についても環境税を含めて税制全体を設計する中で見直す余地がある。
そう認めたうえで、むしろ懸念するのは政策決定プロセスのあり方だ。民主党は政府と党の一元化をうたって、政策決定は政府の仕事と説明してきた。ところが、この間の鳩山内閣は重要課題の決定をことごとく先送りし、予算編成と税制改正論議も「党の出方待ち」の状態になっていた。
そこに投げられた民主党要望に対して、鳩山由紀夫首相は「党というより国民の思い。感謝する」と語っている。まるで政府に代わって、小沢一郎幹事長率いる党が予算編成と税制改正の基本方針を決めているような印象がある。
鳩山首相は十七日になって「わたしが決める」と語り、長妻昭厚生労働相は所得制限に否定的な姿勢を示しているが、要望通り決着するなら、民主党が舞台裏の密室で決めたも同然になる。この間の党内議論は小沢幹事長と少数の側近が仕切って、国民にはなにがどう議論されたのか、さっぱり伝わってこない。
政府が決める前であっても、党には党の説明責任がある。民主党が重視してきた透明性確保の点で重大な疑念を抱かざるをえない。インナーと呼ばれる少数の実力者が税制改正を決めた自民党時代と変わらなくなってしまうのではないか。
経験不足で意思決定に不慣れな鳩山内閣に小沢幹事長が助け舟を出したとみることもできる。そうであるなら、小沢幹事長は説明役も引き受けねばならない。政権発足から三カ月が過ぎた。もう年の瀬だ。鳩山首相には、なにより果断な決断を求める。
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