小沢一郎・民主党幹事長の公設第1秘書を被告人とする政治資金規正法違反事件の初公判が開かれ、秘書側は起訴内容を全面的に否認した。
事件は国会議員らに巨額の政治献金をしていた西松建設が、同社社員らでつくった政治団体の名義で小沢氏側の政治団体に寄付をした事実を巡り起きた。
検察が描く事件の構図はこうだ。西松建設は小沢氏の地元岩手県などの公共工事受注を狙い、影響力の行使を期待してカネを出した。同社の政治団体は、献金の見返りに便宜をはかってもらう“取引”が明るみに出ないようにするためのダミーだった。小沢氏の秘書は事情を知ったうえで、政治資金収支報告書に本当の献金元を隠してダミーの政治団体を記す虚偽記載などの違反を犯した。
この構図を虚構だとする被告側は初公判で「西松建設からの寄付とは思っていなかった。(献金元の)政治団体は実体があり、ダミーではなかった」などと反論。そもそも、これまでの規正法違反事件の刑事処分や、同じ西松建設側の政治団体から献金を受けた政治家の扱いに比べるとき、検察が小沢氏の秘書を立件したのは恣意(しい)的で、起訴自体が無効と訴えた。
検察は、西松建設から献金を受けた側で小沢氏の秘書だけを正式起訴した理由を、規正法違反の経緯が極めて悪質だからと説明してきた。
冒頭陳述でも、小沢氏の事務所が公共工事の受注業者選定に「決定的な影響力」をもち、その力にものをいわせてゼネコンに献金を要求してきたとの主張を繰り返した。小沢氏がゼネコンとの癒着を強く否定していたこともあって秘書は西松建設の名を伏せた、との記述もある。
つまり検察は、起訴したのは秘書だが、小沢氏の影響力の使われ方や、力を背後においた資金集めの手法が事件の本質だと言っているのだ。
法廷で決着がつくのは、秘書に刑事責任を負うべき行為があったのか否かにすぎない。
有力政治家それも政権党の幹事長である小沢氏が国民に負う責任はもっと別のところにあるだろう。検察が指弾する、秘書の犯行の背景事情について、小沢氏は法廷の外で自らの言葉で説明する責任がある。