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天声人語

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2009年12月19日(土)付

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 ご時世だから年中出回ってはいるが、大根はやはり吐く息が白くなる頃からがうまい。ブリ大根も、おでん種もいい。スポンジさながらに、どんな味も体に染みわたらせる得意技で、冬の食卓をにぎわせる▼風呂吹きは大根が堂々の主役になる。裏に十文字の隠し包丁を入れ、昆布を敷いた鍋で煮る。急(せ)かずに弱火でゆっくり時間をかける。〈風呂吹や忙は心を亡(ほろ)ぼすと〉森澄雄。湯上がりのような大根を、ふうふう吹きながら口に運べば、師走の寒波もしのげそうだ▼借りて耕しているわが菜園で、今年も大根が穫(と)れ盛りになった。冬野菜というのは、暑い季節にはすぐに育ってしまい、風味が薄く水っぽいのだという。冬の畑でじりじり育ち、土の滋養をたっぷり取り込んでこそおいしくなると、以前に紙面で読んだことがある▼青首をつかんで引っ張ると、意外なほどに簡単に抜ける。水をかけてタワシで洗えば、まぶしいばかりに白く輝く。そういえば〈大根を洗ふ門(かど)には冬来(きた)る〉と、「笑う門には福来る」をもじって詠んだ江戸川柳もあった▼同じ江戸の〈五月女(さおとめ)のしまわぬうちは土大根〉は、田植えをする女性の足を泥つき大根に見立てた。〈白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる〉と俵万智さんにうたわれた白菜とともに、艶(つや)っぽい冬野菜の双璧(そうへき)でもあろう▼寒波は週末がピークらしい。夜ふけに音もなく降りだした雪で、けさ起きたら銀世界という方もおられよう。こんな日は、食卓にたつ湯気そのものがごちそうになる。さて、大根の出番となるか。

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