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春秋(12/18)

 「裏を見せ表を見せて散る紅葉」。良寛上人がいまわの際に弟子と取り交わした句だ。かつてロッキード事件の法廷で弁護人がこれを朗々と詠じたことがある。被告人に不利な「表」の証拠しか見せない検察官をやり込めた弁論だった。

▼表も裏もためらいなくさらして散る紅葉を見習え、と言いたかったのだろう。たしかに刑事裁判は検察に不都合でもすべてを法廷に差し出さなければ誤った判断を招きかねない。ところが実際には手持ちの材料をえり分けている。42年前の布川事件で再審開始が決まったニュースは、その現実を教えてあまりある。

▼検察が握っていた証拠がようやく明かされ、無期懲役の確定していた2人が冤罪(えんざい)を晴らそうとしているのがこの事件だ。彼らの悲憤とは比べものになるまいが、なぜもっと早く「裏」も見せなかったのかと無念でならない。しかも今では裁判員裁判の時代だ。これでは市民が真実に目を凝らすにも闇が深すぎよう。

▼「裏」といえば、取り調べの裏側も見えるようにしなければ裁判員を誤らせることになる。布川事件で2人が有罪になった決め手は、やはり自白だった。容疑者とのやり取りを録音・録画し、それをさらけ出しても市民を説得できる捜査を遂げるしかない。何よりも、冤罪に泣く人を出さないための道ではないか。

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