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天声人語

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2009年12月18日(金)付

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 古代の中国に尾生高(びせいこう)という男がいて、橋の下で女と会う約束をした。待ちに待ったが女は来ない。折からの雨に川は増水してきたが、かたくなに約束を守ってその場を離れなかったそうだ▼水が引いたあと、人々は橋脚にしがみついて死んでいるその姿を見つける――。「尾生の信」として伝わる故事である。約束を違えぬ誠実をほめるか、融通のきかない愚直を笑うか、評価は人によりけりだろう。マニフェストをめぐる民主党政権の逡巡(しゅんじゅん)に、この故事が胸中で重なっていた▼そんな政府の背中を押すように、小沢幹事長が鳩山首相に「マニフェスト改変」を突きつけた。政府はありがたく拝聴したそうだ。ガソリン減税はやめよと言い、そうなれば公約の重要な変更になる。子ども手当にも所得制限を設けよという▼予想を超えて財源は窮乏し、マニフェストを貫けば他のもろもろが軋(きし)みをあげる。だが公約への期待も大きい。尾生高ではないが、約束をとっても現実に即しても評価は割れよう。約束破りの役回りを小沢氏が引き受けたとの観測もある▼ところで、かの「論語」にも尾生高とおぼしき人物が登場するそうだ。酢を借りに来た人に、無いと断らずに、隣から借りてきて体面をつくろったという。孔子さまは「彼は正直者ではない」と難じたと、手元の故事集に教わった▼改変の求めは、優しい首相に代わって幹事長が「酢は無い」と国民に断った図だろうか。孔子さまは小沢さんをほめるかもしれない。だが国民の目には、笑えぬ二人羽織があらためて焼き付いた。

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