日米両政府は航空自由化(オープンスカイ)協定の締結で合意した。来年十月までに発効する。遅ればせながら日本の航空市場も国際競争時代に入る。運賃引き下げなどサービスの向上が課題だ。
世界の航空業界からみれば一周以上の遅れだが、日本もようやく米国との自由化に踏み切った。これまで政府間で路線や発着地、便数などを細かく決めてきたが今後は航空会社が路線などを自由に決められる。
航空大国の米国はすでにEUや韓国など世界九十カ国・地域と自由化協定を締結済みだ。日本は政権交代で自由化推進が公約となっていることや、来年三月に成田、十月には羽田の発着枠が増加するため米国と協定に合意した。
自由化されると航空会社はコスト削減やネットワーク拡大に全力を挙げる。企業間提携や経営統合が活発になり、EU諸国では国境を越えた企業再編が進行中だ。今や世界の主要航空会社は三つの企業グループに集約されている。
利用客にとって最大のメリットは運賃の低下だろう。格安航空会社(LCC)も進出するから料金競争が激しくなる。米・EU間では15%以上も低下したという。また乗り継ぎなども便利になる。
ただし自由化協定には米国の独占禁止法の適用除外(ATI)取得が不可欠となっている。審査は十カ月程度かかるという。独禁当局の迅速な判断を求めたい。
今後の焦点は日本航空と全日本空輸両社の生き残りだ。有望なアジア市場などでしっかりとした地位を確保できなければ世界的な航空再編の波にのみ込まれよう。
全日空は現在加盟している「スターアライアンス」メンバーの米ユナイテッド、コンチネンタル航空両社と提携を強化。ATI取得後、ただちに営業拠点の共同化などに取り組むことを決めた。
焦点は経営危機の日航だ。大胆なリストラを進めると同時に成長戦略を描くことになる。現加盟の「ワンワールド」の一員として同グループのアメリカン航空と提携を強化するのか、あるいは「スカイチーム」に移籍して世界最大のデルタ航空と提携するのか、早急な決断が必要だ。
政府は日本の空港の魅力アップに全力を挙げてもらいたい。着陸料引き下げや交通アクセスの改善などは緊急課題である。とくに成田は時間帯や滑走路の有効活用で発着能力をもっと高めるべきだ。そうした努力の延長線上に「首都圏ハブ空港」が実現する。
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