米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の決着は越年が決まった。現行計画通りに県内移設する選択肢は残しているが、民主党が衆院選で訴えた県外・国外移設の検討に軸足を移すべきだ。
越年方針は、民主党の菅直人副総理兼国家戦略担当相、社民党党首の福島瑞穂消費者担当相、国民新党代表の亀井静香金融担当相らによる基本政策閣僚委員会で決まった。
結論を出す時期は今後、与党三党で調整するとともに、移設先は新設する実務者協議機関で検討するというものだ。
現行計画の米軍キャンプ・シュワブ(名護市辺野古)沿岸部も候補地に含まれており、県内移設の選択肢を残してはいる。
米側は「唯一実施可能な案」として日米合意に基づく現行計画の実施を求めているが、在日米軍基地の74%が集中し、県土面積の一割以上を米軍用地が占める沖縄県の負担軽減策が、県内に新たな基地を造るという負担強化であってはならない。
日本国民、特に沖縄県民が先の衆院選で民主党に託した県外・国外移設の検討に向けて本腰を入れるときだ。決着の越年が、県内移設やむなしという雰囲気づくりのための単なる時間稼ぎに終わったら、政治への信頼を損ねる。
来年は日米安全保障条約改定から五十年の節目の年に当たり、今年十一月の日米首脳会談では、同盟関係を深化させるための共同作業を始めることで合意した。
移設問題の先送りに米側が反発し、作業開始は遅れているが、同盟深化のための作業と移設先検討は並行して行うことが望ましい。
在日米軍基地の在り方は、東アジア情勢の変化に合わせて、在日米軍の意義や自衛隊の役割を見直す中で結論を出すべきだからだ。
そのためにも、鳩山由紀夫首相は、オバマ米大統領との信頼関係構築に努めてほしい。県内移設が困難になりつつある日本の政治状況を率直に説明し、理解を得る努力を惜しんではならない。
政府は当初、来年五月までに結論を出す意向だったが、社民党の反対で見送られた。
結論をことさら急ぐ必要はないが、移設問題の根本は、住宅密集地に囲まれた普天間飛行場の危険性除去だ。
これまでにも事故が度々起きており、再び事故が起きれば、日米安保体制への不信感は決定的になる。結論を出すにあたっては、そうしたことも十分心得てほしい。
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