もともと日程調整のはずだった問題が波紋を広げている。15日に予定される天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見、それ自体は問題はない。鳩山由紀夫首相が従来のルールに沿わない特例としたことが与党内でも批判や懸念を招いている。
習副主席は胡錦濤国家主席の最有力後継候補である。今回の訪日はいわばお披露目だ。胡主席も副主席就任直後の1998年4月に訪日し、天皇と会見している。中国側は習副主席にも同様の待遇を求めた。
問題になったのは、天皇の負担軽減などのため、外国要人らとの会見は1カ月前までに申請するという「1カ月ルール」を崩したからだ。外務省は中国側に早く申請をするよう要請したが、11月中旬まで動かなかったという。それが事実ならば、中国側も注意が足りなかった。
一方、羽毛田信吾宮内庁長官によると、外務省から宮内庁式部職に内々の打診があったのは11月26日。既に1カ月を切っていたため「応じかねる」と返答した。
だが、12月7日と10日に平野博文官房長官から電話で特例扱いするよう求められた。鳩山首相が指示した要請だった。政府は11日、副主席と陛下の会見日程を発表した。
民主党の小沢一郎幹事長は9日に駐日中国大使と会い、10日に訪中、胡主席とも会談した。小沢氏が特例会見を働き掛けたとの見方もある。小沢氏は14日夕、関与を否定し、羽毛田長官を「反対なら辞表を出した後に言うべきだ」と逆批判した。
鳩山首相は同日午前、特例会見に関する判断は日中関係を発展させるためにも間違っていなかったと強調した。そうだろうか。習副主席も日本の各方面が歓迎するなかで、陛下との会見に臨みたかっただろう。
岡田克也外相が国会開会式での天皇のお言葉の見直しを提起し、物議を醸したのは記憶に新しい。「政治主導」の民主党政権は、皇室への対応に鈍感になっていないか。
憲法上、天皇の国事行為は内閣が責任を負う。外国要人との会見は年100回以上に及ぶ。国際親善の意義もあるだけに、ときの政権に政治利用されるのではないかとの疑念を生じさせてはならない。結果的に日中関係も損ねかねない。