HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 15 Dec 2009 01:17:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:約十万人が犠牲になった東京大空襲の経験者が描いた絵画を「す…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年12月15日

 約十万人が犠牲になった東京大空襲の経験者が描いた絵画を「すみだ郷土文化資料館」(東京都墨田区)で見たことがある▼焼夷(しょうい)弾の直撃で炎に包まれながら吹き飛ばされる人たち、ゴム人形のようになって飛んできた火ぶくれの赤ん坊…。地獄の業火をくぐった人でなければ描けない表現に息をのんだ▼大空襲の被災者と遺族が、国に損害賠償と謝罪を求めた訴訟の判決で、東京地裁はきのう、「心情的には理解できないわけではない」としながらも、立法を通じて解決すべき問題と請求を棄却した▼「どんなに過酷な戦場でも、一晩で十万人が亡くなったのは初めてだった。日本の国土が最も過酷な戦場だった」。支援者の作家早乙女勝元さん(77)は判決後にそう語った。安全に暮らせるはずの「銃後」は、戦地そのものだったが、訴えは届かなかった▼東京大空襲をはじめ焦土化作戦の責任者である米空軍のカーチス・ルメイ将軍に、日本政府は一九六四年、勲一等旭日大綬章を授与した。航空自衛隊創設に貢献したとの理由だ。多数の民間人を殺傷した無差別爆撃の責任者に「免罪符」を与える権利がだれにあったのかと思う▼判決に落胆しつつも、原告の草野和子さん(74)は「判決の随所に私たちの運動を認めざるを得なかった表現がある」と光明を見いだす。平均年齢七十七歳。原告たちは控訴して闘いを続ける。

 

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