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ものの本によれば、結婚しなければ出来ないことが二つあって、一つは夫婦げんか、もう一つは離婚なのだそうだ。片や犬も食わないと言われ、もう一方も真砂(まさご)の数ほどあるが、著名人の場合はメディアに「ドル箱」を提供する▼ありふれた交通事故が大ニュースに発展するとは、出動した救急隊も驚いたろう。夫婦げんかが原因ともされた事故の後、タイガー・ウッズ選手は噴き出す醜聞にまみれた。水に落ちた犬ならぬ虎さながらに、ついに無期限にクラブを置くと自ら宣言した。人気に頼ってきたゴルフ界には衝撃である▼様々な意味で英雄だった。強いうえに品行方正、慈善活動には進んで加わった。保守色の濃いゴルフ界に残る人種差別の空気を破ってもきた。それが今や、名前のあがった「愛人」は2けたを数える▼背信行為による汚名には、それまでの善行がすべて跳ね返る。米国の集中豪雨的な報道は、わがワイドショーも色を失うほどらしい。クリントン元大統領の不倫以来だと、在米の知人が知らせてくれた▼墜(お)ちたる偶像に夢を砕かれたファンは少なくあるまい。その昔、大リーグで球史に残る八百長があった。名手シューレス・ジョーらが追放された。裁判所で無実を願う少年が叫んだ「嘘(うそ)だと言ってよ、ジョー」の言葉を、ウッズに投げたい人もいることだろう▼「妻や子どもたちを失望させ傷つけた」と本人は深く懺悔(ざんげ)している。立ち直ってほしい人である。しばらく「犬も食わぬ」ふうにそっとしておく度量が米社会とメディアにあればいいのだが。