二階俊博前経産相の秘書が偽装献金事件で略式起訴され、「政治とカネ」への国民不信は深まった。西松建設との密着の実態は詳(つまび)らかでない。二階氏にはくすぶった疑念をぬぐう責任があるはずだ。
何とも手の込んだ偽装献金事件である。西松建設の社員が一人五万円を寄付したと偽り、同社側から三年間で計九百万円を献金した。政治資金収支報告書には、このような小口献金の寄付者の名前を書かずに済むからだ。
カネは政党支部から別の政治団体を経由して、二階氏の実弟が実質運営する政治団体に流れ込む。この団体は西松側の関連会社から大阪に事務所を借りていて、最終的に献金が、その家賃に化ける。そんな構図だ。
政治資金規正法違反で秘書は、罰金百万円の略式命令を受けた。だが、国民感覚からすれば、それで済む話ではないだろう。公判が開かれないので、なぜ二階氏側が支援を受けられたのか、その背景事情が分からないからだ。
西松建設と二階氏は三十年来のつながりがあるといわれる。旧保守党時代にも献金があった。二階氏が自民党に戻ると、ダミー団体を通じて、約八百万円のパーティー券を購入したことも事実だ。
また、二階氏の地盤である和歌山で、同社は空港工事など多くの公共工事を受注している。二階氏の選挙区に集中しているのも不可解だ。西松関係者は献金について、東京地検に「工事受注に有益な情報と人脈関係を期待した」と話している。どんな癒着があったのか、疑念が消えない。
二階氏は「(秘書は)やや軽率なところがあった」などと述べたにすぎないが、責任を自覚し、説明を尽くすべきである。
「政治とカネ」の問題が相次ぎ噴出している。小沢一郎民主党幹事長の秘書は、西松建設からの献金をめぐり起訴され、十八日に初公判を迎える。鳩山首相の元秘書も偽装献金で、在宅起訴される見通しだ。母親から提供された多額資金についても注視されている。
とくに今回の事件は、小口献金という抜け穴を巧妙に使った点が特徴だ。鳩山首相の場合も、原資はともかく、大勢の個人を装って、五万円の小口に分散した点では共通だ。この手口は政界の闇に広く巣くっていると勘繰りたくなる。
秘書だけが矢面に立たされる点も同じだ。違反があれば、政治家本人の責任まで問われるように法の抜本的な改正を望みたい。
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