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中国の台頭が象徴する世界自動車市場の劇的な変化。ガソリン車からハイブリッドや電気自動車に向かう新技術のうねり――。大転換に直面する自動車業界で、前向きな世界的再編の動きが加速している。キーワードは「環境」「新興国」「低価格」だ。
独フォルクスワーゲン(VW)とスズキが包括提携を発表した。VWがスズキ株を約20%保有し、グループ化する。狙いの第一は新興国戦略での相互補完だ。中国市場や南米に強いVWと、インド市場の5割を握るスズキは相性がいい。第二が環境技術。スズキが開発面でVWの支援を受け、価格面では、小型車の低コスト生産ノウハウを供与する。
自動車世界一の座は米ゼネラル・モーターズが1931年から2007年まで保持したが、08年にトヨタ自動車が奪取。09年はVWが急追しており、今回の提携でトヨタを追い抜くことが確実になった。業界地図を塗り替える積極策である。
仏プジョー・シトロエングループは三菱自動車に出資し、筆頭株主となる方向だ。決め手は環境。三菱自が辛抱強く開発を続けた充電式の電気自動車の技術がものをいった。新興国市場での補完関係も展望している。
世界の自動車市場は07年に6700万台近くまで拡大したが、一連の経済危機で今年は5500万台程度に減る見込みという。長く世界最大だった米国市場が大きく落ち込み、危機前から躍進著しい中国市場に今年はトップの座を明け渡す。インドなど新興国の市場拡大も確実視される。
需要の中心も変わった。米国市場で好まれた高級車や大型車から、新興市場の中間層にも手が届く、安くて燃費のいい小型車へと、一気にシフトした。地球環境対策を背景とした各国の燃費規制強化と相まって、ハイブリッド車や電気自動車など次世代車への転換も必至になった。
1908年に米フォードの「T型」登場でガソリン車の覇権が決定的になって以来、1世紀ぶりの技術転換の大波が業界を見舞っている。新市場をにらんだ生き残りのための再編は、今後も続くに違いない。
再編劇は自動車メーカーにとどまらない。パナソニックが三洋電機を子会社化した最大の狙いは、充電池など自動車向け環境技術の強化だ。自動車が電気製品に近づくのに応じて、電機業界の再編も強く促されよう。
環境、新興国、低価格という自動車再編のキーワードは、先進国市場に傾斜した結果として閉塞(へいそく)状態に陥った日本の企業全体に共通する課題だ。
部品など裾野(すその)が広く、「産業の中の産業」とされる自動車業界のダイナミックな動きで、日本経済に「打って出る」機運が高まることを期待したい。
地球の脱温暖化をめざす京都議定書後の国際枠組みづくりを、本当に進められるのだろうか。序盤から、そんな不安が膨らんでいる。
コペンハーゲンで開かれている国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の現況である。
議長国デンマークが途上国の削減行動を含む合意文書案をつくって一部の先進国などと水面下で調整していたことに、途上国がさっそく反発した。
また、途上国の中でも、温暖化の悪影響が大きい島国や最貧国と、温室効果ガス排出が増えている中国やインドなど新興国との間で、考え方に隔たりがあることも浮かび上がってきた。
閣僚級や首脳級の交渉に向けて、各国はCOP15の使命を思い起こすべきだ。世界が一丸となって温暖化を防ぐという決意を込めた「コペンハーゲン合意」をつくり、来年の新たな枠組みづくりにつなげなければならない。
先進国が積極的な努力を約束するのは当然だ。と同時に、世界の温室効果ガス排出の約半分を占める途上国にも行動を起こしてもらう必要がある。
ただ、これらの国々は、温暖化対策が経済成長の足かせになることを警戒しており、それが交渉を難しくしている。「技術や資金の手助けがほしい」という要望に先進国側が応えていくことが、その突破口になるはずだ。
日本は、2012年まで3年間の短期支援で計90億ドル超の構想をいち早く打ち出した。欧州主要国や米国なども同じ3年間に先進国全体で年間100億ドルが必要になるとみている。
先進国が足並みをそろえて短期支援を約束する意義は大きい。日米欧などは具体的な支援規模を決め、今回の会議に持ち寄ってもらいたい。
一方、中長期的には、途上国の温暖化対策で年間1千億ドルほどが必要になるともいわれる。世界全体の途上国援助(ODA)の総額にもほぼ匹敵する。今回は、資金を安定供給するしくみの青写真だけでも示せないか。
財源として、先進国への拠出義務づけや国際炭素税の導入、排出量取引市場での資金調達などのアイデアが浮上している。公的資金だけでなく、民間投資を促す仕掛けもあってよい。
日本は「鳩山イニシアチブ」をもとに支援のしくみづくりをリードしていけるのか。閣僚級や首脳級の交渉が、その正念場となろう。
短期でも中長期でも、厳しい経済状況の下では巨額の支出となる。日本企業の商機につなげるといった発想も求められる。途上国支援が日本の削減実績に計上されるよう、ルールづくりでも積極的に提案をしていきたい。
途上国の低炭素化は先進国にも利益をもたらし、世界全体の排出も抑制する。支援は他国のためだけではない、といった意識をもつべきである。