HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60133 Content-Type: text/html ETag: "21a6bb-1634-ee396d80" Expires: Thu, 10 Dec 2009 22:21:05 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 10 Dec 2009 22:21:05 GMT Connection: close 延命治療中止 有罪確定でも重い課題が残る : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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延命治療中止 有罪確定でも重い課題が残る(12月11日付・読売社説)

 患者の延命治療を中止した医師を殺人罪に問うかどうか。初めて最高裁が判断を示した。

 川崎市内の病院で、(こん)(すい)状態となった男性から呼吸を助ける気管内チューブを抜き、筋弛緩(しかん)剤を投与して死亡させた医師に対する裁判である。

 最高裁は殺人罪の成立を認めた東京高裁の判決を支持し、被告の上告を棄却した。懲役1年6月、執行猶予3年とした高裁判決が確定する。

 最高裁は「患者には脳波などの検査が行われておらず、回復可能性や余命について的確な判断を下せない状況だった」と指摘し、そうした中での治療中止は許容できないとした。

 延命治療の中止を拙速に判断することを戒めるものだ。重く受け止めねばならない。

 同時にこの裁判は、延命治療をどこまで行うべきかという、さらに重い問いを残した。1審からの判決の流れも、問題の難しさを浮き彫りにしている。

 被告の医師側は、死期が迫る中で治療を中止したのは家族の要請であり、筋弛緩剤は症状緩和のために投与したもので患者の死因ではない――などとして、刑事責任を問われない事例であると主張していた。

 裁判所は一貫して被告の主張を認めなかった。1審の横浜地裁は「家族らが了承したと軽信し、許される一線を逸脱した」と医師を指弾し、懲役3年、執行猶予5年の判決を出した。

 だが、2審の東京高裁は、「治療中止を独断で決めた」などと1審同様に厳しく批判しつつも、情状面では大きな配慮を見せた。

 「治療中止について法的規範も医療倫理も確立していない状況で(医師の)決断を事後的に非難するのは酷」と述べて、刑を1審の半分に減じたのである。

 高裁判決はさらに、延命治療の中止が認められる条件などについて、「抜本的に解決するには法律の制定かガイドラインの策定が必要だ」とも付言している。上告棄却の決定により、最高裁も高裁の見解を認めたと言える。

 この事件を機に、厚生労働省や日本医師会などが、延命治療を中止する場合には複数の医師らで検討する、といった指針の策定を試みているが、まだ十分なものはできていない。

 中止判断に疑問が生じた場合には、どのような場で検証され、どこまで責任が問われるのか。具体的な議論に踏み込み、指針の確立を急ぐ必要があろう。

2009年12月11日01時01分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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